4章 夜の街を共に( 2 ) ページ49
夏目くんとの待ち合わせ場所に辿り着くと遠くからでも目を引く彼の赤毛が視界に映る。約束の時間に合わせてやってきたつもりだったけど、もしかしたら遅刻してしまったのかもしれない。
(……も、もしかして、私…やらかした?)
少しだけ顔を青くさせて考え込んでいれば彼の方が私に気が付いたみたいでスマホを眺めていた視線を此方に向けて笑みをにこりと浮かべてきた。
腰掛けていた椅子から立ち上がればそのままスタスタと此方へ夏目くんが歩み寄って来る。私より十数センチ身長の高い彼が何処か楽しげに私を見下ろしてくるものだから思わず少し後退ってしまった。
「やァ、Good night 野良猫ちゃん。フフフ、一人で顔を青くさせてどうかしたノ?…心配しなくてもボクらが約束した時間を過ぎたりはしていないヨ。」
「ま、まだ何も言ってないよ!……確かに私が心配してたのは、そのことだったけど。…遅刻してなかったのは安心したけど待たせちゃったのならごめんね。」
言葉を発する前に思案していた内容がバレてしまえば思わず吃驚してしまう。私が分かり易すぎるだけなのかもしれないけど、やっぱり夏目くんはすごいなぁ。一先ず、自分が遅刻していなかったという事実を知ると安堵から胸を撫で下ろした。
けれど、彼を待たせてしまったと言うのも確かな事実。軽く頭を下げて謝ると夏目くんは「ボクが早く来ちゃっただけだかラ、野良猫ちゃんは何も悪くないヨ」と言葉を紡ぎながら私の顔を上げさせた。…そういう所もしっかりしているというか、さすがだなぁと思う。
「にしても、な、なんでわかったの……?」
「ン〜…顔に書いてあったからかナ♪」
……私はやっぱり分かり易いのかもしれない。何だか少しだけ悔しい気持ちが湧いてきたからぷくりと片頬をふくらませると、これまた愉快そうに夏目くんが私の膨らませた頬を指先でつんつんとつついてきた。
「まぁまァ、そう拗ねないデ?折角のかわいいお顔が台無しになっちゃうヨ。…野良猫ちゃんの拗ねてるお顔もなんだかかわいく見えるけどネ。」
「か、かわ……、……もう、夏目くんは褒めるのが上手だね。」
少し気恥ずかしくなった私は膨らませていた頬からぷすりと空気を抜いてみる。…やっぱり言葉で夏目くんに敵うのは無理な気がしてきた。
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エンドロール - すごくこの作品好きです!描写も細かいし何より読みやすくて面白い!これからも頑張ってください、応援してます。 (2020年1月18日 13時) (レス) id: feeead544b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドロップ | 作成日時:2020年1月15日 9時