検索窓
今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:51,808 hit

4章 夜の街を共に( 2 ) ページ49

夏目くんとの待ち合わせ場所に辿り着くと遠くからでも目を引く彼の赤毛が視界に映る。約束の時間に合わせてやってきたつもりだったけど、もしかしたら遅刻してしまったのかもしれない。


(……も、もしかして、私…やらかした?)
 

少しだけ顔を青くさせて考え込んでいれば彼の方が私に気が付いたみたいでスマホを眺めていた視線を此方に向けて笑みをにこりと浮かべてきた。


腰掛けていた椅子から立ち上がればそのままスタスタと此方へ夏目くんが歩み寄って来る。私より十数センチ身長の高い彼が何処か楽しげに私を見下ろしてくるものだから思わず少し後退ってしまった。


「やァ、Good night 野良猫ちゃん。フフフ、一人で顔を青くさせてどうかしたノ?…心配しなくてもボクらが約束した時間を過ぎたりはしていないヨ。」


「ま、まだ何も言ってないよ!……確かに私が心配してたのは、そのことだったけど。…遅刻してなかったのは安心したけど待たせちゃったのならごめんね。」


言葉を発する前に思案していた内容がバレてしまえば思わず吃驚してしまう。私が分かり易すぎるだけなのかもしれないけど、やっぱり夏目くんはすごいなぁ。一先ず、自分が遅刻していなかったという事実を知ると安堵から胸を撫で下ろした。


けれど、彼を待たせてしまったと言うのも確かな事実。軽く頭を下げて謝ると夏目くんは「ボクが早く来ちゃっただけだかラ、野良猫ちゃんは何も悪くないヨ」と言葉を紡ぎながら私の顔を上げさせた。…そういう所もしっかりしているというか、さすがだなぁと思う。


「にしても、な、なんでわかったの……?」


「ン〜…顔に書いてあったからかナ♪」


……私はやっぱり分かり易いのかもしれない。何だか少しだけ悔しい気持ちが湧いてきたからぷくりと片頬をふくらませると、これまた愉快そうに夏目くんが私の膨らませた頬を指先でつんつんとつついてきた。


「まぁまァ、そう拗ねないデ?折角のかわいいお顔が台無しになっちゃうヨ。…野良猫ちゃんの拗ねてるお顔もなんだかかわいく見えるけどネ。」


「か、かわ……、……もう、夏目くんは褒めるのが上手だね。」


少し気恥ずかしくなった私は膨らませていた頬からぷすりと空気を抜いてみる。…やっぱり言葉で夏目くんに敵うのは無理な気がしてきた。

4章 夜の街を共に( 3 )→←4章 夜の街を共に( 1 )



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
142人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

エンドロール - すごくこの作品好きです!描写も細かいし何より読みやすくて面白い!これからも頑張ってください、応援してます。 (2020年1月18日 13時) (レス) id: feeead544b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ドロップ | 作成日時:2020年1月15日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。