【あんスタ】夜行少女【逆先夏目】 (ページ41)

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3章　小さな世界( 7 ) ページ41

「……………、」

「…野良猫ちゃん、布団に篭もるのは別にいいんだけド、顔は出した方が良いんじゃないかナ、」

あの後は散々だった。

幸い、私の部屋を出てすぐ近くにトイレがあるので行くまでは良かったのだが、用を足し終えいざベッドへ戻ろうと思ったら足から力が抜け床に座り込んでしまい、そこから立てなくなってしまったのだ。

扉を開け、夏目くんにもう一度支えてもらえば歩けるかとも思ったのだが、今度は歩く事さえままならなくて。

…結果、夏目くんにお姫様抱っこされて布団まで戻ってきた、という訳だ。

そこまででも死ぬほど恥ずかしかったのに。

お粥位なら自分で食べられるのに、それすらも夏目くんに’いいかラ、はイ、あーン♪’と言われて食べさせられてしまった。…………本当に、恥ずかしい。

トイレから自分で帰って来られないし、ご飯は食べさせられるし、まるで赤ちゃんみたい。

恥ずかしすぎてもうどんな顔で彼を見ればいいのか分からず、布団に篭っているというのが今の私の現状である。

私の様子を伺う様に夏目くんが布団をとんとん、と叩くけれど生憎私は布団から出られそうにない。

……いや、ここまでお世話してもらったのにも関わらず、こんな態度はしてはいけないんだろうけど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

なんて考えていると、悪戯に耳朶に響いたのは夏目くんの声で、

「何時までも布団に篭ってたラ、薬も飲めないヨ。……解熱剤も飲まきゃいけないんだシ。…野良猫ちゃんのお望みとあらバ、座薬なんかもあったりするけド…♪」

「ざ、座薬………！？！ふ、普通ので大丈夫だからね…？！？？」

「アッハハ、冗談だヨ♪女の子である野良猫ちゃんニ、そんな事は出来ないからネ。」

耳元で囁かれた上に座薬、という単語に驚いた私は思わず彼を見遣りながらふるふると首を振って抵抗の意を示す。

すると可笑しそうに冗談だと告げた彼を見てなんだか身体の力が抜けてしまった。

…これは夜の時間、偶に会う夏目くんと一緒に過ごす内に分かったことだが、彼は案外嘘を吐く。嘘というか、冗談というか。

…私は今でも、彼の冗談によく翻弄されてしまう。

早くそんな彼の冗談に慣れたい、なんて思いながら身体を起こしてもらえば、夏目くんから手渡された錠剤をこくり、飲み込んだ。