41年の月日にはー

再恋2 ページ8

侘助saidー

俺の上に乗ったままのAの手は微かに震えていた。

「…ぅ…の？」

とても小さい声で何か言った。

「え？」

「侘助なの？…ほんとに、侘助が居るの？」

そう、震える声でAは呟くように言った。
泣いたようにも聞こえるくらい弱々しい声だった。
思わず、そっと抱きしめた。

「侘助？……侘助。」

「あぁ。俺だ。」

「侘助、居るよね。本物なんだよね。」

「居る。本物だな。」

AのTシャツを握る手が俺にまわる。

「うん。…侘助だ。本物。…そっか、侘助みたいな人、他にいるわけないしね」

「うるせぇ。」

小さくAが笑う声がした。俺も思わず笑う。

「ねぇ、何で私は止められたのにAお姉ちゃんの時は何も言わないのよー。」

声がした夏希の方を向くと、全員がこちらを見て微笑んでいた。黒笑いを浮かべている理一ただ一人を除いて。

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