夢見心地_11 ページ12
*
『波音はお母さんの胎内で聴いていた音と似てるんですって』
そう言われると、俺の手の動きが自然と止まる
もうこんな「汚れた男」の手なんかに触れられたくないだろう。
『死ぬなら…海がいいかも知れませんね。』
「ちょっ…早まるような事はしないで！
何なら俺がもうちょっと責任持てる歳まで待ってよ…」
ある意味、腹を括った一種の告白だった。
正直一生寄り添えるのかと言われれば多少の未練もある
でも俺が招いた失態、俺が責任を取るのが筋でしょ。
『…そんな勿体無い事言わないでください。』
「は…？」
『輝かしいこれからの人生、私みたいなのが寄り添えば
それこそ瀬名さんが不幸になりますよ？』
「何強がってんの、いい加減ウザいよ…
……素直になりなよ。」
『ならば一生私はウザい奴です。
安心してください、自ら命を絶つ行為…
この私がするとでも思いますか？』
昼間に自分の腹の子と決別した人間とは到底思えない強さ。
だけど…彼女だからこそ“生きる重み”を
誰よりも承知しているのではないだろうか。
______『瀬名さん、好きでした。』
その言葉を言われた時には既に遅かった。
「俺達はもう少し先の未来で出会うべきだったねぇ…」
『遅かれ早かれ私達はこういう運命だったかも知れませんよ。』
「どうしてそんなにポジティブなの..」
『逆境に立った今だからこそ…ですよ..』
ネガティブに浸るのはもう十分だ。
これからはこの足でこの身で
社会に立ち向かいたいと彼女は言った。
『私が歩かなきゃ、動き出さなきゃ、笑わなきゃ
幸福はいつまで経っても掴み取れないんですよ。』
そうだ、こちら側が動かなければ
何も物事は進まないし未来は変えられない。
当たり前の事なのに…この時ばかりは感銘を受けた。
最後に、俺が選んだ貝殻と
アイツが選んだ貝殻を互いに交換し
バイクで家まで送った。
…
『私、強くなります。』
「その言葉が聞ければもう俺からは何も言う事無いよ。」
『じゃあ……』
俺から切り出せなかった別れを今彼女が______
『おやすみなさい、泉さん。』
永遠の別れが「さよなら」以外にある事を思い知った。
最初で最後、下の名前を呼ぶなんて
______生き殺された気分だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆめゆら。(プロフ) - ゆあさん» 勿体無いお言葉です、甘々のハッピーエンドよりこういう話の方が私には綴り易いです（笑）ありがとうございました。 (2016年4月2日 10時) (
レス) id: 4e91be757d (このIDを非表示/違反報告)
ゆめゆら。(プロフ) - 菫さん» 読んで頂きありがとうございました* (2016年4月2日 10時) (レス) id: 4e91be757d (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - とても感動しました！ゆめゆら。さんの作品はどれも素敵なものばかりで、いつも楽しみにしています。 (2016年4月1日 10時) (レス) id: a2e2f69fa3 (このIDを非表示/違反報告)
菫 - 更新楽しみです！頑張ってください！ (2016年3月31日 21時) (レス) id: 01be289194 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆめゆら。
| 作成日時：2016年3月31日 17時
