夢見心地_10 ページ11
*
「ねえ、本当にこれで良かったの…」
『はい、これで充分です。』
彼女の最後の頼みは、俺と夜の海に行く事_____だった。
波の音が心地良い、潮の香りが鼻腔をくすぐる
サラサラした砂の上に二人腰掛け地平線を眺める。
『海って落ち着きますよね。』
辺り一面誰もいない、静かな海にはこの女の声だけが響く。
「そうだねぇ…」
一体何を考えているんだろうか。
全く持って怒らないし、愚痴もこぼさず
俺に慰謝料の一つすら要求しない。
アイドルとして本格デビューした時、
復讐でもされるのではないのかとさえ思った。
『綺麗な顔が台無しですよ？』
「あんたはいつから俺の事心配するくらい
強くなったわけ……？」
体育座りで俺は顔をうずめながらそう言った。
『瀬名さんが教育してくださったんじゃないですか。』
月夜に照らされた端麗なその顔が
少し、ほんの少しだけ微笑んだ気がした。
こんな時に笑えるようになるなんて…
俺疲れてるんじゃないのかって思ったけど
『この景色、あの子に見せたかったな..』
「……次あんたが子供を授かった時はちゃんと地面に立って
その足で色んな所に連れて行ってあげてよね..」
「色んな景色見せてあげられなくてごめん…」
『もう謝らないでください、私はただ
お母さんを感じたかっただけです。』
「…お母さん？」
そう言えば危険な匂いしかしなくて
俺はこいつの家庭事情を聞き出した事がなかった。
『物心着いた頃にはお母さんは既にいませんでした。
多分離婚…だと思うんですけどね。』
「そう…」
『私、堕ろしたのこれで2回目なんです。』
「…はぁ？！ それ…本当？」
『恥ずかしい話ですが…最初は実のお父さんでした。』
壮絶過ぎて言葉が出ない。
俺より年下でまだ十数年しか生きてないのにも関わらず、
重たい過去という鎖がこいつを縛っていたのだろう。
『引きましたよね、いいんです…瀬名さんとも
今日でお別れですし。』
知ってるのに、今日が最後だって分かってるのに
聞きたくない…飲込みたくない
この子が隣にいない現実を受け止められる自信がない。
「俺があんたに色々教えてもらってたんだねぇ..」
もう触れてはならない柔肌を
彼女の白くキメの細かい肌にそっと手をかざす。
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ゆめゆら。(プロフ) - ゆあさん» 勿体無いお言葉です、甘々のハッピーエンドよりこういう話の方が私には綴り易いです（笑）ありがとうございました。 (2016年4月2日 10時) (
レス) id: 4e91be757d (このIDを非表示/違反報告)
ゆめゆら。(プロフ) - 菫さん» 読んで頂きありがとうございました* (2016年4月2日 10時) (レス) id: 4e91be757d (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - とても感動しました！ゆめゆら。さんの作品はどれも素敵なものばかりで、いつも楽しみにしています。 (2016年4月1日 10時) (レス) id: a2e2f69fa3 (このIDを非表示/違反報告)
菫 - 更新楽しみです！頑張ってください！ (2016年3月31日 21時) (レス) id: 01be289194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆめゆら。
| 作成日時：2016年3月31日 17時
