浮世は風【銀魂】 (ページ47)

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閑話ページ47

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「･･･寝ちまったか」

雅は規則正しい寝息をたてていた。その顔にかかる髪をよけてやる。

スっと通った鼻筋に長い睫毛。
濡れ羽色の髪が一層雅の肌が白いのを強調している。

立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花なんて言葉も、もう聞き慣れてしまったほどだ。

ふいに雅の目から一筋涙が零れた。昔の夢でも見ているのだろうか。

昔から、涙を見せない女だった。人知れず涙を流して、戻ってきたら花が咲いたような笑みを浮かべていた。

幸せになって欲しかった。俺の目の届く所じゃなくていいから。本当は、自分の手で護ってやりたかったけど。

いい家柄の娘は、政略結婚の道具として扱われる。雅も例外ではなく、幼い頃からうんざりするほど道具として評価されてきた。

それでも、出会い方がどうであれ戦争なんかに参加するよりは良かったはずだ。

俺たち3人は、雅を連れて行かないことを選択した。でも、出発の日雅は俺たちの前に立っていた。

「私も行く。女だから来るなというなら、私は今日から男だ。」

そう言って自分の髪を束ねると、刀でその根元から切ったのだ。

あれほど髪は女の命と言って大切にいた雅が、髪を捨てた。それは、女を捨てたことと同義だった。

俺は雅にそんな選択をさせてしまった事を悔やんだ。誰より女としての幸せを掴んで欲しかった相手に、女を捨てさせてしまった。

それから雅は、喋ることも笑うことも少なくなった。いくら女を捨てたとはいっても、身体的なものは変えられないからだ。

自分の素性が知れるのを恐れた雅は、名を聞かれても氏しか明かさないようになった。

そうした徹底的な行動の甲斐あって、敵にも味方にも名前ひとつ知られることはなかった。

だから無名として後世に名を残すことになったのだ。