月とピアノとスタンドマイク【ツキウタ。男主】

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その夜。


片付けが粗方終わった所で、ダンボールからパソコンを取り出す。重度のヲタクである(らしい)俺にとって、パソコンは第二の栄養補給源だ。

愛用のパソコン三台を、机とキャスター付きの引き出しの上に、予備の一台を戸棚にしまう。
ベッドの枕元についている棚に、目覚まし時計と読書用ライト、ラジオ、ゲーム機、スマホの充電コードを通せば完璧。



俺の城の完成！



年長組の協力のお陰で、まだ時刻は９時半前だ。感謝しつつ、机に向かう。
パソコンのネット設定や、住所変更お知らせメールの送付、家族へのメッセージの送信を終えたところで、扉がノックされた。


葵「Aさーん、起きてます？」

「寝てるー」

新「がっつり起きてますよね、お邪魔しまーす」


遠慮なく開けられた扉に、驚くことなく手を挙げる。


葵「お邪魔します」

「どぞどぞ」

新「相変わらず趣味全開っすね」

「ありがとう！」

新「誉めてねぇよ」


貶してもいないけど、と付け加え、新はボスンとベッドに座り込んだ。
慌てて新を諫めようとする葵に、いいのいいの、と新の隣に座る。


「逆にさ、堅苦しいのやめようよ昔みたいにさ！折角『近所の兄ちゃんと弟分』から『ルームメイト』に昇格したんだし」

葵「え、でも…」

新「良いんじゃないか？葵。A兄もそう言ってるんだし」

「さっすが新！良いこと言うねぇ」


軽く体当たりすると、新はニヤリと笑って「だろ？」と体当たりし返してきた。


葵「はぁ…分かったよA兄」


一つため息を吐いて、葵は肩から力を抜いた。その表情は呆れ顔で、でも確かに笑っていた。吹っ切れたとも言うかも知れないが。


葵「それにしても、二人ともホント少年だよねぇ。並んでるとそれが顕著に出る」

「それ誉めてるの？」

葵「誉めてる誉めてる」

新「本当かなぁ？」

「怪しいなぁ？」

葵「本当だって！」


クスクスと笑う葵に顔を見合わせると、新はやれやれ、と言うように肩を竦めた。彼らしからぬその表情に笑みをこぼすと、葵の手を引き座らせる。

さて、何から話そうか。

そう言えば、何でも、と声が揃う。

三人でまた笑って、談笑に励むことにした。


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