月とピアノとスタンドマイク【ツキウタ。男主】

13 phrase ページ15

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数日後。

とあるビルのとあるスタジオで、それは始まった。









「良い舞台にしましょう！よろしくお願いします！」

「「「よろしくお願いします！」」」



そう、ミュージカル 藍染桜の初稽古日である。


初日と言うだけあって、スケジュールを合わせてきたのかキャスト全員が揃っていた。
これから３ヶ月後の本番へ向け、日々練習を繰り返し、完全なものへと仕上げていく。

役代わりを含む約40人のキャスト陣は若手中心で、しかも実力派揃いだ。

稽古期間の３ヶ月と、東京・大阪での一日二公演二週間ずつ。
その中で、俺がどれだけ成長できるか。

しかも座長は俺。

不安も沢山あるけれど、それを上回って余りある、高揚感、緊張感、期待感。
使命感とはちょっと違う、そんな気持ちが俺の中に堆積して、俺の心を埋めていった。



予め渡されていた台本を片手に、まずは読み合わせを行う。

俺が演じるのは、ふらりと京に現れた謎の浪人。その正体は人ではなく、何百年も生きてきた刀の化身というファンタジーな設定だ。

朏さんの役は、主人公の元仲間で、同じく刀の化身の男。仲間と共に執拗に主人公を追い回し、仲間に引き戻そうとする。

そして我らがグラビ・プロセラ勢は、主人公を匿う新撰組のメンバーを演じる。それぞれの役の思いをどう表現するかが、芝居の大きな要となるだろう。


まだ読み合わせだが、歌もある程度は歌ったりして、各々がどうキャラを創ってきているのかが分かってくる。
それを受けてどう自分の役に修正を入れていくのか、互いに相談しつつ、模索し始めた。


さて、どうしようか。


俺も、試行錯誤を始めた。



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