【ハイキュー】可愛くなれたら＊及川徹 (ページ6)

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｢これだけ服屋さんがあると迷っちゃうね…｣
友達と出かける用の服が欲しいからと言っていた子を駅前のショッピングモールに連れてきた。
去年クラスと委員が一緒だった女の子。
いい子なのに自分に自信がないように見える。
一見メガネで地味に見えるけれどちゃんと可愛い。
周りはそれに気づいてないみたいだが自分的にはそれでよかった。
この子の可愛さは自分だけが知っていればいい。
でもあの男にも知られているんだろうな。
｢とりあえず、あの店入ってみようか｣
｢うん！｣
色々な店を回っては似合いそうなコーディネートを合わせていく。
最終的に選んだのは淡い黄色のカーディガンにグレーのチュールスカート。
落ち着いた雰囲気のAにはとてもよく似合っている。
買い物を終えてほっとしたのかAの顔は朝よりも晴れやかだ。
ショッピングモールを出て2人で歩く。
｢松川くんありがとう！｣
｢いいえ、無事に買えてよかった｣
｢なにかお礼しないと…｣
｢いいよそんな｣
｢あ！ちょっとここでまってて！｣
Aはそう言うと少し先にある公園のクレープの屋台へと小走りでかけて行った。
｢はい、どうぞ｣
｢ありがとう｣
手渡されたひとつのクレープ。
生クリームにいちごが乗っている。
｢あれ？Aのは？｣
｢あ、松川くんの分しか考えてなかった…｣
なんだそれ、可愛すぎないか。
｢はい、あーん｣
｢え？で、でも｣
｢いいからほら｣
ちょっと強引すぎたかな、と思いつつ口元にクレープを持っていくと諦めたのか1口食べた。
｢おいひぃ｣
｢ね｣
自分もクレープを1口頬張ると口の中に生クリームといちごの味が広がった。
｢ねぇ松川くん｣
｢ん？｣
｢どうして今日一緒に来てくれたの？｣
｢自分好みにコーディネートできるからかな｣
好きな子を、と言うのは隠しておいた。
｢えっと…？｣
こういう鈍感なところもまた可愛い。
｢困ってる人を放っておけないだけだよ｣
｢松川くんは本当に優しいね｣
別に誰にでも優しいわけじゃない、Aだからだ。
俺がこの子に告白しても振られるのは目に見えている。
この子は及川の事が好きで、土曜の予定も友達ではなく及川だろう。
去年から見てきたからわかる、視線の先にはいつも及川がいた。
だから及川との予定に自分が選んだ服で行かせるのは及川へのちょっとした嫌がらせ。
｢あいつより先に見つけていられたら変わったのかな｣
｢ん？ごめんよく聞こえなかった｣
｢土曜日楽しんできてね｣
これは精一杯の強がり。