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目を見開いて、理解する inドイツ ページ8

「マリー?」


 そうつぶやいた俺に、お嬢様___ いや、マリーは軽くうなずいた。


「わたしは、マリーなの。セトやみんなと、一緒に住んでるの。それに______」

「それに?」


 少し言いよどんだマリーは、口をゆっくりと開く。


「わたし、こんな姿じゃないの。本当は、髪ももっと長くて白くて…。背も、もう少し低いの」


 マリーの言ったことを考える。

 マリーは、前はこの姿ではなかった。

 つまり、お嬢様のそっくりさんではないということだ。

 ということは、お嬢様の体はそのままで、中身が変わってしまったということ…?

 それってつまり___


「つまり、入れ替わったってことか?」


 こくんと頷くマリーを見て、俺は目を見開いた。


「マジかよ」


 入れ代わっただなんて、到底信じられるわけない…。

 しかし俺は思い出す。

 ニホンザルにされ、“ゴルド”として過ごした日々のことを。


 口を開いて出てくるのはサルの鳴き声。

 毎月2万ユーロも納めなくてはならなかった、ブラック企業での日々。

 おまけに毎日バナナ生活。


 …人がサルになることだってあるんだ、入れ替わりが起こったって不思議じゃない。


 世界の神秘をかみしめていると、再び泣き出しそうなマリーの姿が見えた。


「大丈夫、信じるぜ。それと______」


 ちょっとキザかとも思ったけど、そのまま続ける。


「そんなに怯えなくてもいいんだぜ? 俺がどうにかしてやるからな」


 こちらを向いたマリーのピンクの目は、大きく見開かれていた。


.

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作者名:菜の葉 | 作成日時:2016年11月5日 11時

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