入れ替わりの朝 inドイツ ページ6
俺は今日も、いつも通りに見回りに出かけていた。
いつも通り、塀の上には猫がいて、空には白い雲がぽっかりと浮かんでいた。
いつも通り、少しひんやりとしていて、太陽がポカポカと温かかった。
そんな『いつも通り』から始まった今日も、いつも通りな一日だと思っていた。
○○○
見回りが終わり、家に戻る。
やっと家が見えてきたと思った時、門の前に誰かが座り込んでいるのが見えた。
朝日にキラキラと輝く金髪。
誰だろうと思う前に、わかった。
お嬢様＿＿＿＿＿＿ エレオノーレ・シュミット様だ。
驚かせないように、ゆっくりと近づいていく。
すると、小さく押し殺した泣き声が、かすかに聞こえた。
「(お嬢様が、泣いてる！？)」
お嬢様は、普段はあまり泣いたりしない。
お嬢様が悲しまないようにとシュテラ様が気を付けているし、何よりお嬢様自身、泣くことが嫌いだ。
そのお嬢様が泣いている。
しかも、道の真ん中で…。
「(そういえば、昨日の夜はやけに暗い顔をしていたな)」
お嬢様から数メートル離れたところで止まった。
「お嬢様？」
肩が、びくりと跳ね上がった。
泣き声もピタリと止まる。
「どうしたんですか？」
そう声をかけると、お嬢様は恐る恐ると言った感じで、俺の方を向いた。
その時気づいた＿＿＿＿＿＿
お嬢様の青いはずの目が、ピンク色に染まっていることに。
「エレオノーレお嬢様？」
俺がそうつぶやくと、お嬢様はまたうつむいてしまった。
しかし今度は、かすかな声ではあるが、しゃべった。
「ち、違う…」
それは、とても怯えたような声だった。
首をゆっくりと、左右に振っている。
そして意を決したように、顔を上げた。
涙を湛えた瞳を正面から見て、お嬢様の雰囲気が、いつもと全く違うことに気付いた。
「『えれおのーれ』じゃない。わたしは、・・・マリー」
.
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あずきいろ
今日のあなたにラッキーな能力は…？
目を覚ます能力
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作者名：菜の葉 | 作成日時：2016年11月5日 11時
