12セーブ 先生方 ページ12
「それで、一つ質問したいのですが」
「はい、何ですか？」
椚先生の視線が、僕の目から右手に移った。
「今は夏なのですが、なぜ貴方は制服の下に長袖を着ているのですか？」
見ているこちらが暑いです、と不満げに言う椚先生に申し訳なく思う。だけど、これは脱ぎたくないのだ。
「昔、傷を作ってしまって。それを隠しておきたいんです」
右手の長袖の下にあるのは火傷の痕。しかも火の付いた煙草を押し付けられた、所謂根性焼きの痕だ。中学でいじめられていた頃の傷で、僕はもう気にならなくなったけれど、これを見て不快に思う人もいるだろう。
「…そうですか。校則違反でない限りは深入りはしませんので、程ほどに上手く隠しておきなさい」
何かの事情を察したのだろう、椚先生はくるりと踵を返して学校の敷地内に入っていった。ありがとうございます、と返事をして、僕もその後を追った。
椚先生についていった先にあったのは職員室だった。
「まずはこの名簿に名前を書いてください」
そう言って渡された紙に、添えられていたペンを使って名前を書く。
「向(こう)、で間違いありませんね？」
「はい」
椚先生は、僕が渡した紙に書かれた僕の名前を確認して、それを椚先生のであろう机の上に置いた。
「それでは教室に行きましょうか。プロデュース科の生徒としての詳しい説明は後々ありますから、まずは…」
そう言って椚先生が僕を連れ立って職員室を出ようとしたとき、どこからか声が聞こえた。
「あきやーん」
その声を聴いた瞬間、椚先生が顔を顰めるのが分かった。
(でも、なんだろう…。心底嫌っているわけじゃなさそうだけど…)
椚先生はその表情を保ったまま、勢いよく声のした方を振り返った。
「陣！…じゃなくて佐賀美先生、その呼び方はやめろと何度言ったら直るんです？」
椚先生は大きなため息をついて、一人の先生を見据えた。
「多分、一生直んないんじゃないかー？」
ははは、と軽く笑ったその男性は白衣を着ていて、理科の先生か保健室の先生なのだろうと思う。無精髭を生やしていて、その声はどこまでも優しい。
「お、この子がプロデュース科の転校生か？」
「プロデュース科の新しい生徒と言うのは合っていますが、転校生ではなく編入生です。まったく、私を呼び止めた要件は何です？」
男性職員…佐賀美先生と呼ばれていた彼は、僕を見つけるなりニコニコと笑った。それを見かねた椚先生が話を切り出す。
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月夜 黒輝(プロフ) - この後がどうなったのか気になる...！都合のいい時でいいので更新再開を希望します！ (2019年3月19日 18時) (
レス) id: 7066949ba0 (このIDを非表示/違反報告)
ショウ(プロフ) - 更新停止中なのがすごく惜しいです是非作者様のペースで良いので新お待ちしてます！ (2018年10月3日 8時) (レス) id: 217b90edc7 (このIDを非表示/違反報告)
ケト。(プロフ) - 更新停止中なのが残念です……再開されるの楽しみにしてます、頑張ってください！ (2018年6月25日 9時) (レス) id: 522e4f0622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西 | 作成日時：2018年1月20日 0時
