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それからも、どう言い訳することもできずついに訪れた一緒に登校する初めての日。
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『坊っちゃま、こちらからどうぞ』
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ツンとした態度で車の扉を開けながら彼女は言う。
こちらを見ようともしないAさんを横目に車に乗り込む。
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あんなことを言ってしまったが、彼女は坊っちゃまという呼び方を変えるつもりはないらしい。
…いや、もはや意地になっているのかな。
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そんなことを考えながら隣に座っているその顔を見つめている。
一瞬振り向いてきて、目が合ったと思ったがまた逸らされる。
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(どうしたら、僕のことを見てくれるんだろう)
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あの日から、まともに顔を合わせてくれない。
どうしたらまた顔をみることができるのか考える。
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でも、考えても考えても埒が明かない。
頭を悩ませてる間に、学校についてしまった。
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先に降りたAさんが車の扉を開けたまま横にたち、頭を下げる。
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……そんな仕草じゃなくて、君の顔がみたいのに。
そう悲しく思いながら、見つめていると、その小さな頭にアホ毛が1本跳ねているのが目に入った。
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｢髪の毛が跳ねてますけど、きちんと櫛でとかしましたか？｣
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しまった、こんな言い方するつもりが無かったのに。
どうしてか、彼女の前では思うように言葉がでない。
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少しキツい言い方をしてしまった自分のことを罰したい衝動に駆られていると、Aさんはようやく顔を上げた。
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『くせ毛なんです！！！坊っちゃまみたいなサラサラヘアには分からないでしょうけど！！！』
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凄い勢いで反論してこられ、驚く。
でもその頬がリスのように膨らんでいるのが可愛くて、あまり怖くはない。
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ずっと我慢してきたが、戒めてくる大人がいないこの場所でついに言葉にしてしまったのだろう。
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最初は言ってやったとばかりのドヤ顔だったが、徐々に顔が青ざめていく。
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「……僕の髪のことは関係ないでしょう」
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そんな彼女を見かねて、また反論してみると、怒られなかったことに安心したのか強ばってた顔が笑顔に変わる。
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(……かわいい、)
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思わず顔が赤くなってしまった私をAさんは不思議そうに見つめる。
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私が記憶している限り、この日が初めてAさんの笑顔をみた日で、…顔を合わせる度口喧嘩してしまうようになった日だった。
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