10 伊那国・雷門イレブン ページ13
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Aが姿を消し、新しい春を迎えた。
俺は星章学園という中学校に妹の春奈と共に強化委員として派遣された。
「彼奴と連絡は取れたか？」
「ううん……全然」
練習後
春奈に彼奴の事を聞いてみたが、首を横に降るだけだった。
「電話もダメか？」
「うん。電話番号は消えてないみたいなんだけど……」
「無事に派遣先の学校にいるといいが……」
俺の呟きに春奈は思い着いたかのようにノートパソコンを開いた。
カタカタとキーボードを叩き、エンターキーを叩いた。
「……！ これは……」
「どうした」
「これを見て」
春奈がこちらに向けたディスプレイに映っていたのはAについての情報。
その中で1番に目に付いたのは……現在のAの所属学校。
その蘭に記載されていた学校は世宇子中ではなく、王帝月ノ宮という学校だった。
「……王帝、月ノ宮か」
「知ってる？」
「いや。すまないが調べてくれるか」
「分かった」
どういう事だ……？
彼奴は世宇子中にサッカー強化委員として派遣されたはず……。
しかし、その前にAにとって不幸な出来事が起こっている。それは彼奴の保護者に当たる人達が事故で亡くなっているという事だ。
調べた所、あの日以降Aは忌引きの為学校を休んでいたようだ。
前に聞いたのだが、Aの所の両親は俺達と同じで亡くなっていたようで、Aの保護者は母方の祖父母だったそうだ。
その祖父母が亡くなった今……彼奴はどうなる？
「！ まさか……」
身寄りの無くなった子供が何処へ連れて行かれるのか俺は良く分かっているつもりだ。
しかしそんなすぐに手続きが進むだろうか。
「お兄ちゃん、出たわ」
「見せてくれ」
再び向けたディスプレイを覗くと、Aに付いてのウィンドウが残ったまま王帝月ノ宮についての情報があった。
王帝月ノ宮中学校
スポンサー企業は電機メーカー“月光エレクトロニクス”
最近よく耳にするアレスの天秤と呼ばれる教育システムのプロモーション活動を行っている学校らしい。
アレスの天秤という名前は街中を歩けば屋外モニターでよく流れているのを見かける。
だが、何をどう聞いてもうんくさいようにしか聞こえない教育システム……そんな企業がスポンサーである学校、王帝月ノ宮中学校……。
「何もなければ良いが……」
……ここで感じた俺の予感は、嫌な方向で当たることになる。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
