二五 ページ27
***視点切り替え***
「確か、この村の……」
初めて来た村は、小さいがそれなりに活発で幸せそうな人が多かった。
この村は兄の担当地域の一つだった。
たくさんの人の笑顔を守っていた兄を改めて尊敬した。
「この店かな…」
宇髄さんに教えられた店は、人は見当たらず、藤の花だけがあった。
お休みなんだろうか?
「あの、すみません」
「はーい!」
女性の声を聞いて、いろんな思いを抱きながら現れるのを待った。
「ごめんなさい!もう、店じ…まい……で………」
「突然すみません。Aさんで間違いないですか?」
ゆっくり頷いたのを見た。
「お話があります」
きっと彼女は察しが良い。
通された場所は店の奥。多分、彼女が家族で住む家の中。
お茶を用意して置くと、目の前に座った。
「初めまして、煉獄千寿郎と申します。」
「初めまして、Aと言います。千寿郎くんのことはよくお話で聞かせてもらっていました。」
どんな話を聞いていたのか、気になったが、今はそれを話す事は出来ない。
「私も兄からAさんの事は聞いていました。」
嬉しそうに話す兄の姿を思い出して枯れたはずの涙が流れそうになる。
「……っ兄が…亡くなりました。任務で上弦の鬼と接触し、」
「そうですか…そうなんですか……」
彼女は涙を流さなかった。
「兄からの遺言で、私は今日ここに来ました。『約束が守ることが出来なかったから、最後に自分の骨だけでも』と」
「ほね…?」
自分が大切に抱えていた兄の遺骨の入った箱を渡した。
「こんな姿になってしまいましたが、兄です。」
彼女は震える手で兄の遺骨の入った箱を手に持ち、
「父さんの言う通り意地でも帰ってくる人だなんて」
そう言って抱き締めた。
今は二人にしようと部屋から出た。
するとそこにはAさんのお父さんが居て、私を手招きして、店の方へと連れて行った。
「食べたい物はあるか?」
「えっあ、………兄と同じものを」
「分かった。待っていてくれ」
数分後に出された天ぷら定食は、見た目から美味しそうで、ついお腹を鳴らした。
「お、美味しいですっ」
「そうか、よかった」
ボロボロと涙が出てしまうほど美味しかった。
これを兄は独り占めしていたのかと思うとずるいと思った。
自分も一緒に連れて行ってくれれば。
恨み言を心で吐いて、温かい料理を口にいれた。
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me(プロフ) - 星流さん» ありがとうございます!涙を流せてもらえたなんて…!本当にありがとうございます!嬉しいです! (2020年8月24日 15時) (レス) id: 875cd6e9ff (このIDを非表示/違反報告)
星流 - 必読の後からボロボロ涙こぼしながら読みましたぁ。なんかもう面白いけど涙止まらなくて両親に不思議な目で見られましたwこれからも応援しますね!! (2020年8月23日 17時) (レス) id: a0acb0a3f9 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - りなおさん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます!キュンキュンしてもらえてよかったです! (2020年8月17日 20時) (レス) id: 875cd6e9ff (このIDを非表示/違反報告)
りなお(プロフ) - とてもキュンキュンさせていただきました…!本編もこぼれ話も泣いてしまいました(TT)素敵な作品をありがとうございます!続きも、楽しみにお待ちしております。 (2020年8月16日 3時) (レス) id: 712037cba2 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - ママよさん» ありがとうございます!お待たせさせすみません。 (2020年7月12日 18時) (レス) id: 875cd6e9ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:me | 作成日時:2020年4月27日 17時