【ヒプマイ】こんな乙ゲー聞いてない

第25話 ページ26

とても気まずい。私はただ渋谷を散策していただけなのに、碧棺左馬刻と出会うなんて…

不機嫌そうな彼はコーヒーを男前に飲んでいて、そこにはヤクザなんて肩書きは見えなかった。



「……あの、何で喫茶店なんかに」

「意味なんかねェよ」

「そうですか…」



事務所を無理矢理追い出されてから、彼とは一生会わない覚悟もあったのだけれど何故か誘われてしまった。

そこに店員さんが来て、「チョコレートケーキになります。」と私の目の前に置いて去っていった。

……チョコレートケーキ



「これ、私に？」

「フルーツ食えねェだろ」



何故知っているのか。
時々、彼らが私のことを知っている気がしてならない。

毒島メイソン理鶯、観音坂独歩、それから碧棺左馬刻…嫌でもそう思ってしまう理由は幾つもある訳で、もしかして私はこの世界をループしてるのか？なんて変なことも考えた。

こうして私が別世界から来たことを考えると有り得ないことではない。ただとてもじゃないが信じられない。



「……頂きます」



彼が蛇だったら私は蛙って所…そんな風に睨まれては美味しいものも全然味わえなくて、チョコレートの味なんてひとつも感じられなかった。

どうして私はこの世界に来たのか、どうしたら元の世界に帰れるのか、やはり誰か1人選ばなければならないのか…



「なぁ」

「はい」

「テメェは誰を選ぶんだよ」



疑問が確信に変わる瞬間だった。
悪い笑みを浮かべる彼は、「聞いてみただけだよ」と冗談の様に言った

冗談な訳あるか。誰かを選ぶ、その言葉が通用するのは私しか居ない。

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