不況でバイト探しはきつい？ 前編 ページ7
あーあ…面倒くせェ…
窓から見える空をジーっと眺めながら
私は暇を潰していた。
「…、」
「無心」になるのには昔から慣れている、
というかそれしか私はきっと脳がないのだから。
こうして店主さんのくだらないお話に耳を傾けている風を装っているくらいなんて事もないものだ。
「しかし、Aちゃんはあって
数ヶ月の付き合いじゃが…
未だに底が知れないのぉ…」
「…えぇ…別にそんなの、
知る必要あります？」
「なかなかに面白そうじゃからのぉ。」
「面白くもないですよ？？
百年くらいずぅっと
何もしてないくらい
無茶苦茶に暇な人生です。」
「…ハハハハ！百年か！
やっぱりAちゃんは面白いのぉ！」
「…そんなに笑わなくても…」
どうやら勝手に冗談だと取ったようだ。
まぁ、私の本当か嘘の見分けなんて
此処らの一般人にはスケールが大き過ぎて「冗談」に聴こえてしまってもしょうがないだろう。
そっちの方はずっと都合が良いが…
「まぁ…でも
そうですね、軽い冗談です。」
ペロッと舌を出すと
彼はまた笑ってくれた。
「そういえば…店主さん、
いつから一ヶ月無料は有効になるんですか？」
ふと気になったのだ。
「今日は流石に無理じゃのぉ…」
「…お腹空いたんですけど。
普通にパパっとあれくらいの傷
治しちゃってくださいよ…」
「無理言わんでくれ…怪人じゃあるまいし…」
「あ…そっか。」
此処でも規格外は私だけだった。
「そっか？！Aちゃんは
わしの事を怪人かなんかだとでも思ってたのか？！」
「あー、いえ、そんなつもりは。
ただ…」
「ただ？」
本当についさっきだが
私は遅刻を理由にバイトを
クビにされてしまったのだ。
馴れ合うことが苦手な私を
あそこの店長は気に入らなかったらしく
今まで何かと色々難癖をつけてくる人だったので
仕方ないと言ってしまえば終わりなのだが。
何せ給料前日で切られたのだ
あの店長が払ってくれるとは思わない。
だからといって、私の雇われ方はかなり特殊だったので訴えるとか以前に文句すら言える立場にいない。
「はぁ…これからの飯どうしよう…って事です。」
今のご時世、私みたいな「人間」が
仕事を探すのも一苦労なのだ。
それなのに
やっと見つけた仕事先を早々に
クビにされてしまっては此方も
怒りすら通り越してゲキ萎えなのである。
此処らはきっと私の味覚と同じで
肌にすら合わないのだろうか？
「じゃあ
此処にいるといいさ
Aちゃん。」
「え、」
不況でバイト探しはきつい？ 後編→←やはりS級はぶっこわれている？ 後編
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作者名：おぼろん | 作成日時：2021年9月16日 22時
