もし「完璧」が存在するなら、私に神はいらない。【ワンパンマン】 (ページ45)

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「かっ…は！？」

あまりの苦しさから視界に靄がかかり
意識が朦朧とし始めた。

そんな私の喉元にはまるで鎖のように頑丈で
どれだけの腕力でひっぺがえそうとしても
離れない彼の手があった。

「何をしている。

早くこの俺に、お前のその力を使え。」

「ボロスッ！！！
だから、何度言えばいいんだよ！！

私はッ！！」

「煩い。」

「っ、」

どしゃりとまるでゴミのように
地面に投げ捨てられた私。

「てm、？！」

文句か何か言ってやろうとしても口から
大量に溢れて来たのは血液だけだった。

「ガッ…グッ？？！」

いつのまにか喉元を抉られていたのだ、
しゃべる事すらままならなくなる。

「あの雑魚には使いながら
この俺には使えないとでも言うのか？？

そんな戯言を吐くお前の口はつまらん、
俺は今、至極退屈しているのだ。」

「い゛っ、」

圧倒的な力で頭を鷲掴みにされる。

「紛らわす為ならお前の喉だけではなく、
その首であろうとも切り落とすぞ？」

これはやばい。

本能的に命の危機を感じた。

でも、だけど…

どうして…何故こんなふうに
お前と道を違えなくちゃいけないんだ。

私は彼と約束した「希望」を
未だ捨てきれなかったのだ。

「…使って…やる…もんか…」

「いいだろう。」

その言葉と共に
今度はわずかな抵抗から
彼の腕を掴んでいた私の右腕が吹っ飛んだ。

「〜ッ？！！」

まだ手刀で斬ってくれた方が良かった。

だが、ボロスが
そんな生ぬるい奴な筈がない。

痛みを、苦痛を、そして私の根底に存在する
親への恐怖を知っている彼はそれをわざと
刺激するかのように…

腕を捥いだのだ。

「今から、お前の四肢を
一本ずつ捥いでいく。

能力を使わない限り
俺は止められないと思え。」

「や、やめ…」

「次は望み通り、左腕だ。」

「ぁ…」

駄目だ。

今の彼は何を言っても耳こそ
貸すつもりはないのだろう。

彼の視線は私ではなく、
私の中に存在する「神」に
向けられているのだから。

ガシリと彼に左腕を掴まれたとき、
未だ色濃く残るその「記憶」が鮮明に脳裏に蘇る。
「人」には到底理解し得ない
彼と言う「化け物」の存在を恐怖した。

しかし…

それ以上に私の中にある
「人」の心を支配していたのは
「悲しみ」ただ一つだった。

「…私達、
約束したじゃないか。

ボロス。」

「…。」

「だから、
私はその言葉を信じてたんだ…」

再生した喉元を彼がまた潰す前に
そう言いきってやったんだ。