過去編5 前編 ページ43
「A、お前は本当に弱いな。」
「んなこと言われずとも知ってるっての。」
だから、その緑の瞳を
呆れたよう歪められても困る。
彼は「ボロス」。
暗黒盗賊団ダークマターの頭目、
宇宙の覇者なんて呼ばれるほどの強さを自らに兼ね備え、私とは比べ物にならないほどの戦闘力を誇っている。
彼と本当に同族なのか?と疑ってしまうほどの
力の差が私と彼の間には存在しているのだ。
「でも前に君は言ってくれたじゃん。
私の魅力は強さじゃないって。」
「その後に、弱すぎるのも
些か問題だとも言ったな。」
「…もういいわ。」
流石に私の底の戦闘力に関しては生まれつきな事もあるので努力を積まない限りはどうしようもないし、彼の「弱すぎる」は別に全宇宙的に見たら
そう弱くもないのだ。
彼が「強すぎる」だけだ。
「私はボロスの退屈は味わいたくはないので、
これでめちゃくちゃ満足してます!!」
何十とある柱の一本にもたれかかりながら
私は一番奥で悠々と玉座に座っている
彼に向かってそう声を張り上げる。
「フン、お前は
満足出来る沸点が低すぎるのだ。
それほどで満足できてしまうのも、
甚だお前らしいがな。」
「あ?」
なんかとても馬鹿に
されてるような気がするのだが。
これは馬鹿にしていると
受けとっていいのか?そうなのか?
「あぁ、しかし。
そうだったな…」
「ん、なに?」
「お前は強さに執着するのではなく
弱さに執着する極めて稀な奴だった!」
ケラケラとやはり馬鹿にしたように笑う彼。
「あ゛??
弱い奴、舐めるなよ??!
たった一匹の蟻が何万と集まれば
象だって殺せるんだぞ??!」
「あり?ぞう?何だそれは。」
ボロスはそう言うなり少し
瞳の中に興味の色を見せる。
「あ、
あー…えっと
なんか地球にいる生物の事なんだけど…うーん。
比喩みたいなもん、そうそう!比喩。」
また前世のよくわからん知識が
出てしまったことに後悔をしながら、
私はなんとか勢いで彼をに説明をする。
「この大きいのが象…それでこれが蟻!」
「ほぉ、」
もう最後は地面に爪で傷をつけて
絵を描いてやっと納得させた。
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作者名:おぼろん | 作成日時:2021年9月16日 22時