深海王編2 後編 ページ37
プリズナー視点
「効いたわ少しね。」
「っ？！」
(なんだ、と…)
そんな事を言っていても
実際は全然効いてすらいないのだろう。
「ラッシュはこうするのよ。」
「うぐぁあ！」
異様な強さを誇る海の帝王だとか言う怪人に、
何度も鉄球を投げつけられる以上の
重みのあるパンチを全身に受けてしまった。
(ソニック…ちゃん…)
守れないかもしれない彼の事を思いながら
自分の意識が暗闇の中に沈みそうになる。
最後の止めとばかりに
叩き込まれそうになった拳が眼前に迫ったその瞬間。
「あぁッ！
もう見てられないんだよっ！！！」
そんな声と共に、
ビルの影から閃光のような速さで
飛び出して来た一つの黒い影。
「？」
「何、貴方？
他の兵隊よりかは毛色が違うようだけど。」
怪人のその声に
自分は霞む視界を上げる。
まさか増援ヒーロー？
一瞬、そう思ったが…
(…いや、違う！怪人なのかっ？！！)
その姿を見て一瞬でその可能性が吹っ飛んだ。
あの怪人よりかはひと回り小さいが
その身体中に血管のようにはり巡らされている
その稲妻のような黒い模様は、
まるで脈打つかのように輝いている。
そしてたった片腕だけで
あの拳を止めているのだ。
これを「化け物」と言わずして何と言うのだろう。
だが、見た目こそ「化け物」であろうとも
この存在は自分を守ったのだ、
それだけは理解できた。
「味方…なの、か？」
口から漏れたその言葉に応えようとしたのか
自分の方へ振り向いた「化け物」は、
「…、」
すぐさま動揺したかのように
その大きな単眼から放たれる鋭い眼光を逸らした。
「まずはその汚いもんを隠せ！！
本当、お前、ヒーローか疑うわっ！！！」
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作者名：おぼろん | 作成日時：2021年9月16日 22時
