検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:6,682 hit

その参 ページ4

彼が鬼殺隊の一員であると知ったのはそれから少し後。
ここの人たちは大体知っていたらしい。私を引き取ってくれていた女性も彼の知り合いだという。
彼は私に言った。「もし鬼殺隊に入りたいなら、技術を教えよう」と。

鬼を殺す。あの日私から様々なものを奪った奴らを滅ぼす。復讐の炎に身を焼かれる人生。
なんだかピンとこなかった。両親のことを愛していたし、惜しみのない愛情を私に向けてくれた。
でも、鬼を殺す人生を生きるのは少し抵抗があった。だって、少しだけ怖かったから。

「鬼が怖くないのですか」と聞いた。彼は一瞬だけ考える仕草をした後、
「怖くないよ。俺にとって、彼らも哀れな生き物だからなあ」といつもの笑顔で笑った。
鬼が怖くないらしい。でもこの人、恐怖心なんてあるのかな。

「別に殺すしかないって訳でもないよ。鬼と人は仲良くせねば」
まるで理想論のようなことを語る彼。「本当はそう思ってないですよね」とつい口から出てしまった。一瞬の沈黙。
「うーん、どうかな。でも、俺は鬼殺は救済だと思っているよ」
救済。彼が幾度も口にしてきた人間向けの言葉。
「これ以上彼らは罪を重ねなくてもいいからね。心を通じ合わせれば、極楽浄土への道は開けるさ」
信者に聞かせれば泣いて褒めたたえるだろう。百点満点の聖人回答だ。

「もし興味があったなら今夜一緒に鬼殺に行こうか」
彼は私の手をぎゅっと握ってくれた。当時の私はまだ幼い少女だと言うのに。
「まぁ見学みたいなものだよ。これでも一応、柱って呼ばれるすごい人だからね」
「見学、なら」
この人が傍にいるなら死ねないし死なないような気がしてきた。
両親を殺した鬼。それが憎く感じないのは、自分がよくない人間だからだと思う。
でも両親のように殺される人がででくるのは哀れだと思う。だから守るために鬼を殺せばいいのだろうか。

「では、よろしくお願いします、教祖様」重い声が出た。今だって鬼は少し怖い。
「あ、その教祖っていうのやめてやめて。鬼殺隊では別の名前で呼ばれているから」
そっと耳元に口を近づけられ、彼の名前を教えてもらった。


「俺の名前は童磨」
氷柱だよ、とクスリと笑う声。なんだか少しいけないことをしているような気がする。
童磨という名前がゆっくりと、自分に馴染んでいく。
この日、私たちは信者と教祖の関係だけじゃなくなってしまったのである。

鬼とわたし→←その弐



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 童磨 , ヤンデレ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

nerine(プロフ) - すごく面白いです!少し詰まっているので、所々改行したらもっと読みやすいかなぁと思います。 (2020年1月18日 4時) (レス) id: b9ed9857b8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ふぃしゅあ | 作成日時:2019年10月21日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。