その弐 ページ3
ここに来て数か月。
彼の説法は魅力的なものだと思った。大の大人が彼の説法に有難味を感じているのなら彼の説法はそれだけ意味のあるものなのではないか。叔母は彼の説法に時より涙ぐみながら熱心に聞いている。
でも私の心の苦しさはなんとなく続いていた。彼を見るだけでチクリとどこか傷んだような気がしたのだ。
それに対して彼はとても私を気に入ってくれたらしい。説法や外出している時以外は私を呼び出してよく膝の上に乗っけてくれた。
「Aは毎日よく聞いて偉いね。神様も褒めているよ」と彼は言う。
そんな彼にどう言っていいのかわからなくて黙ってばかりだった。
でも、彼の中身は空っぽなんだなと思う時がある。どの表情もどれも同じに見えてしまって、人間味を感じない。そのあたかも同情したかのように流す涙もこれが正しいと説く説法も、本当に彼本人が信じているものだと思えない。子供ながらの勘なのかもしれない。
「Aは鬼が憎い?」と彼が聞いた。「憎いです」と私は答えた。
「そうか」と彼は頷く。「Aは案外俺に似ているのかもな」とだけ彼は言った。
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nerine(プロフ) - すごく面白いです!少し詰まっているので、所々改行したらもっと読みやすいかなぁと思います。 (2020年1月18日 4時) (レス) id: b9ed9857b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふぃしゅあ | 作成日時:2019年10月21日 22時