12話 ページ17
その子は、目を見開き驚いた様子を見せる。
それに対し、怒りと安心が入れ混ざった複雑な心境の私。
「……咲良さん」
彼女の声は、周りの音に消されることなく私の耳に響いた。
私は、その声の懐かしさや安心を覚え涙が込み上げてくるのが自分でも分かる。
そこで、大粒の涙が1つポロッと零れる。
そんな私を見た彼女は、「えっ、えっ」としどろもどろに立ち上がり、私に近付く。
彼女はギュッと私に抱き着く。私はそれを拒否する余裕もなく、彼女のそれを受け入れてしまう。
「ば、ばか……っ！心配したんだから……ッ！」
私は、泣いてることがバレないよう必死に彼女に言葉を投げかける。
彼女の胸の中で私は、1人でそう声を荒らげていた。
「もう、勝手にいなくならないで……」
無様かのように私は必死に彼女に心の底の言葉を放った。
彼女はいつになく優しく、そして切ない声で
「泣かせてすみません」
と声を放った。彼女は私の背中を優しくさする。私はその温もりにまたもや涙が止まらなくなる。
彼女がなぜこんな場所にいたのか、なぜ私達に本当の事を話してくれなかったのか、聞きたいことは沢山あるのだが今は声が全く出ない。
そんな私を見透かすかのように彼女は息を吸って言葉を私に投げかけた。
「私はこんな人ですからいつ、また警察官に捕まるか分かりません」
と。自分から、私の聞きたかったことを話し始める。
「もし、本当に逮捕されたら咲良さんも桃子さんにも迷惑がかかってしまうので 」
私を抱き締める腕を緩め、言葉を放ち続ける。
「私は、誰にも言わないで家を出ました」
「きっとお二人は私を止めるので……」
私はここで全てが分かった気がして、やっと安心の気持ちが胸に込み上げてきた。
そして私は、由梨に優しく言葉を掛ける。
「由梨になら、迷惑かけられたって良いんだよ」
と。すると彼女はまた目を大きくし驚いた様子を見せる。
「私達に迷惑かけない由梨なんて、由梨じゃないから」
私が、それを言うとふふっと笑う由梨。
「慰められてるんだか、
「でも」と彼女は続ける。
「ありがとうこざいます」
薄暗いネオン街で出会った私達は、まさかこんな関係になるとは思っていなかっただろう。
いつも喧嘩ばかりで問題を起こしてばかりの不良。そんな人にこんなにも振り回されるなんて私も堕ちたもんだな、なんてことを独りでに感じていたのだった。
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ゆ - 尊い (2019年5月12日 17時) (
レス) id: 0c30cd4e30 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのキッコーマン(プロフ) - 途中までしか見ていませんが、とても僕はこの作風好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年5月5日 18時) (レス) id: 6ae7a02465 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - ありがとう御座います！そんなこと、あるんですね笑 もしかしたらその小説の作者さんと気が合うかもしれません笑(？) (2018年12月31日 14時) (レス) id: b9c47787f2 (このIDを非表示/違反報告)
Fall ill apple(プロフ) - お気に入りさせてもらいました。余談ですが私の好きな小説の主人公(？)と同姓同名で少し驚きました…笑 (2018年12月31日 13時) (レス) id: c31f5fcd9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪見だいふく | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/
作成日時：2018年12月29日 16時
