13話 ページ18
もう、既に日付は変わっていた。午前1時である。
私と由梨は冷たい手をお互いに繋ぎながら家へと帰っている。
たまにチラチラ見られるがそんなの気にする必要なんてない。由梨も全く気にしていない様子だった。
「……咲良さん、」
静かな雰囲気だった私達の間に、由梨は落ち着いた声でそう声を放った。
「なに?」
それにつられ私も小さな声でそう聞き返す。私よりも身長の高い由梨に、私の声が聞こえたのかは不安だが、彼女もまた小さな声で私に話しかける。
「私、こんなに幸せでいいんですかね……」
彼女は悲しみを帯びた声で私に話しかけた。家に着くまで後5分程度だろうか。家に着くまでにこの話が終わるのかどうかだが、これは長くなりそうだ。
「私、咲良さんにずっとお世話になってばかりですよ」
と。彼女はいつも以上に素直に私に感謝を伝えてくる。それに対し、「こっちのセリフだよ」と声を放つ私。この言葉に由梨がなんと思っているか分からないが、彼女はいつものポーカーフェイスを保ち続けている。
「私も、由梨と出会ってから変わったし」
と、私は会社のことを思い出しながら言葉を出していく。あまり関わりのない後輩からも「変わった」と言われたのだから、これを由梨のおかげと言わなければ何になるのだろう。
その時に由梨にお礼を言ったら「こっちのセリフですよ」と言われたことを思い出し、今と真逆だななんてことを感じた。
「私こそ由梨にお世話になってばっかりだなぁ」
私はボソッと呟いた。
そんなことを話しているともう家は目の前。そして、玄関には見慣れた姿。
「2人とも!私、心配したんだよ!」
桃子ちゃんは私達に泣きつきながら飛びついてくる。それに私達は声を合わせ「うわっ」と声がもれてしまう。
「桃子さん、ご迷惑をお掛けしました」
そう言い、丁寧に謝罪の言葉を放つ由梨に対し、桃子ちゃんは「いいの、いいの!」と由梨を慰める。
そして、桃子ちゃんの目線は私の方へ向く。すると私を指さし「咲良!私はあなたに怒りたい!」と。私は「はぁ!?」と無意識に声が出てしまう。
「何で、いっぱい電話したのに出ないの!」
「しかも、何あのお酒の量!家に入った瞬間アルコールまみれだったんだから!」
そう言われ、急いでスマホを確認すると不在着信の通知が16件と見たことの無い数字になっていた。由梨と再会出来たのだから、少しでも感動的に終わりたいのだが。人生はそう上手くいかないようだ。
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ゆ - 尊い (2019年5月12日 17時) (レス) id: 0c30cd4e30 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのキッコーマン(プロフ) - 途中までしか見ていませんが、とても僕はこの作風好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年5月5日 18時) (レス) id: 6ae7a02465 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - ありがとう御座います!そんなこと、あるんですね笑 もしかしたらその小説の作者さんと気が合うかもしれません笑(?) (2018年12月31日 14時) (レス) id: b9c47787f2 (このIDを非表示/違反報告)
Fall ill apple(プロフ) - お気に入りさせてもらいました。余談ですが私の好きな小説の主人公(?)と同姓同名で少し驚きました…笑 (2018年12月31日 13時) (レス) id: c31f5fcd9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪見だいふく | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/
作成日時:2018年12月29日 16時