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27.ニート、終わらせる。 ページ29

私は呆然としていた。





『…』





自分の手を見る。
未だ、撃った時の衝撃が残っていた。





(…終わった…)





あの後。
影に私の弾丸が命中し、消え去っていった。



けれど所詮は異能。
完全に消し去る事は出来なかった。




影は私の足元に戻っていってしまったのだ。
でも、私は何も言わなかった。




ただ、皆の方を振り向いて。





『帰ろう』とだけ言った。





そして今。
私は探偵社の待合室で、1人ぼうっとしている。
社長に呼ばれたのだ。





「…燐」




『!社長…お、お疲れ様、です』




「貴君もご苦労だった」





慌てて座り直す。
緊張で思わずゴクリと唾を呑み込んだ。





『その…よ、用件とは何でしょうか』




「…貴君の異能の事だが」





たらり、と汗が頬を伝う。
そこで社長が茶をそっと啜る。



その間ですら緊張でドキドキしてしまう。





「今回の一連の事件は、貴君の異能が原因だったと聞いた。
…それは(まこと)か」




『は、はい』




「…そうか。
貴君の異能は特に、操縦(コントロール)を必要とする。
故に…この探偵社に居た方が安全なのだ」




『…え…な、何故でしょう、か』





社長は切れ長の目で私を真っ直ぐ捉えた。
思わずびくっとしてしまう。





「…私の異能"人上人不造"は社員の異能を制御する事が出来る」




『…!』




「これから、少しは今までより楽になる筈だ」





…もう私の過去の事まで社長に伝わっていたらしい。



その事も気兼ねしてわざわざ言ってくれたのだろうか…。





『…有難う御座います。これからも探偵社員の一員として、頑張ります』




「…期待しているぞ」





そう言って社長は出て行った。





『…ふ〜…』





思わずソファに顔を突っ伏した。
全部終わったのだと思った瞬間、一気に脱力した。




…でも、ここは待合室だ。
その内、誰かがお客さんを招き入れるかもしれない。





『…は〜…また書類作成かぁ…』





これからやる仕事の量を考えて、思わず溜息を吐いた。




けど不思議と、悪い気はしなかった。

28.ニート、再びバレる。→←26.ニート、撃ち抜く。


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作者名:くれーぷ | 作成日時:2017年12月19日 21時

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