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22.ニート、対峙する。 ページ24

「異能…って…アレが、ですか…?」








敦の言葉に、燐は静かに頷いた。
燐が視線を向けると、黒い何かは燐の形に変わった。







先程とは打って変わって、黒い何かは大人しくなった。







燐が一歩一歩、近付いて行く。








『…きっと、此奴は私の中に居た…忘れ掛けていた、過去の私』







[…痛い、痛いとずっと叫んでた]








黒い燐が語り出す。
燐は微笑み、続きの言葉を紡ぐ。








『幸せな未来を夢見ていた』







[過去を抜け出せず、苦しんでた]







『外へ出たくなくなった、だから引き篭った』








黒い燐が口元を緩ませる。
燐は静かな瞳で黒い燐を見据えた。








[家族が居ないなんて、信じたくなかった]







『独りでずっと苦しんでた』







[だから、過去を封じた。
今迄嘆いていた私を、殺した]







『…そうして、出来たのが』








黒い燐が嗤う。
燐も笑い返す。








[…私、である]







「…」







『…過去に蓋をして、幸せな今を掴み取った。だけれど今でも響いてくる。







家族の側に居られなかった私を、責める声が。









…此奴が、私の過去そのもの』








数秒の静寂。
それを打ち破ったのは、刃が空を切る音。








『…!』







「…それでも、敵には変わりない」








刃物を携えた鏡花。
そっと燐の横に立つ。







黒い燐に対し、敵意を剥き出しにして対峙する。








「燐さんを傷付けたから…今だけは大人しくして貰わないと、だしね」








微笑む谷崎。
鏡花の横に立つ。







周りに雪が舞い散る。








「…燐さん」








最後に、敦が燐の横に立つ。







そっと、燐に手を差し伸べる。








「…今は、独りじゃないですよ」







『!』









燐は一瞬だけ静かに微笑み、








『…うん』








敦の手を、しっかりと掴んだ。

23.平凡だったのに。→←21.黒いモノの正体.


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作者名:くれーぷ | 作成日時:2017年12月19日 21時

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