雲が聴くのは月の歌 part３ (ページ41)

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嘘の顔ページ41

雲「・・・。」

・・・なぜ・・・

・・・その顔を僕に向けるのか。

　雲「ねぇ。」

　「・・・・。」

僕は彼女を呼び止める。

しかし、

彼女はそのまま歩いていこうとしている。

そんな彼女の後ろ姿に僕はかまわず話しかけた。

　雲「・・・なんでそんな顔してるの。」

　「・・・・・・・。」

僕は彼女に問いかける。

彼女は僕の質問に足を止めた。

そしてゆっくりとこちらを振り向く。

見れば、彼女は何かに耐えるように
両手を強く握りしめていた。

　雲「・・・僕の前でまでそんな顔しなくてもいいでしょ。」

　「！」

彼女が僕を見て微笑んだ時。

その表情を見て思い出したのはあの３人と
一緒に居た時の彼女の顔。

今、目の前に居る彼女は僕にその時と同じ笑顔を
向けていた。

僕は彼女に近づき、話を続ける。

　雲「・・・僕は知ってる。いつもあの部屋でどんな顔をしていたのか。」

　「・・・・。」

そう。

僕は彼女の本当の顔を知っている。

彼らと一緒に居る時の微笑む表情は
彼女の本当の顔では無い。

応接室で１人考え事をしながら過ごす
苦痛に満ちたあの表情。

あれこそが彼女の本当の顔。

　雲「・・・だから・・・今更隠したって無駄だよ。」

　「っ・・・・・・。」

僕は彼女の頬に手を当てる。

雨に濡れ続けた彼女の頬は冷たかった。

微笑みかける彼女の顔は嘘の顔。

その顔を僕に向けたのだ。

彼女は僕にまで嘘を付こうとしている。

僕の言葉に彼女は唇を噛み締めていた。

　雲「・・・声が出なくたって・・関係無い。」

　「・・・。」

彼女は声が出ない。

しかし、

そんな事関係ない。