ロンドンのお土産話3―コナンSide― ページ11
「工藤くん、落ち着いて。前も言ったけどAさんは組織の人じゃないわ」
Aさんが、バーボンだけが苦手なんて怖いことを言いだすから、いてもたってもいられず灰原に電話をかける。
で、灰原に「Aさんがバーボンなんだろう？」と問い詰めたら、ひどく冷たい言葉を投げられた――ってわけ。
「そうはいっても、酒全般OKなのにバーボンだけ苦手なんてあからさますぎるだろう」
「あからさますぎるからこそ、それはありえないって考えにはならないの？名探偵の推理にしてはお粗末すぎるわよ。
仮に私がバーボンだったら、黙ってそのウイスキーを美味しくいただくわ。
そこにあったのがバーボンなだけで、単にウイスキー全般苦手ってだけの話しかもよ。 だってお姉さんからは全く組織の感じがしないもの。昴さんの方がよほど怪しい」
「でも、あの人、ポアロの安室さんと付き合ってるし……それ自体怪しいだろう？」
「落ち着きなさいよ。組織の人同士の交際をこんなところであからさまにして何のメリットがあるの？少なくともあなたに明かした時点で、全く怪しさを感じないわ。
っていうか、そんなに怪しいと思っているなら『蘭ねーちゃん』と二人きりにさせちゃダメなんじゃないの？」
「……いや、まあ……それはそうなんだが……」
灰原の言葉は正しい。
でも、蘭がオレののろけ話をしているところにどんな顔して混ざっておけっつーんだよ、無理だろ。
「でもまたそっちに泊っているなんて悔しいわ。
ねえ、今度少年探偵団でキャンプにでも行きましょうよ、お姉さんを誘って。あ、『蘭ねーちゃん』は誘わないでね」
「へぇへぇ。わーったよ」
つーか、なんで蘭も灰原もAさんに懐いてるんだよ。懐きすぎだろう。
いやそのくらい魅力がないと安室さんと赤井さんと付き合うとか無理なのかも……
そういえば、結局、赤井さんはAさんに自分の正体をばらしたんだろうか。
自分が絶対に蘭に江戸川コナンが工藤新一であることを明かせない心境をそのまま当てはめれば、簡単にばらすわけねーよな、と思わなくもないが、あの人本当に底知れねーからな。
『正体を隠す理由がわからん』って思ってそうな気もする。
「あら、妬いてるの？ むしろ、どうしてあなただけAさんの魅力がわからないのか不思議だわ。じゃ、くだらないこと考えてないで寝なさいよね」
無言であることをそう理解したのか、灰原はそういって、電話を切ってしまった。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月8日 10時
