ロンドンのお土産話4―コナンSide― ページ12
「……で、オレのところに電話してきたっちゅーわけか」
やれやれ、と、電話の向こうで服部が苦笑している様子が目に浮かぶ。
「明日朝一でそっちに行くわ」
「いや、そういう意味で電話したわけじゃ……」
灰原に電話を切られたことが納得いかなくて、服部と話して頭を整理しようと軽く考えたオレが浅はかだった。
とはいえ、どうして服部はそんなに、Aさんに会いたいのか……。本当に一目惚れしたっていうのか？
「ちゅーても、結局工藤も同じやんか。
Aさんのこととなると、冷静な判断ができひんってあたりで。
バーボンって組織の情報屋やったっけ？あのおねーさんは、そういうキャラにはみえへんけどな」
「普段は違うように装ってるに決まってるだろう？」
いや、そうとも言い切れないか？ ジンやウォッカは遊園地の中でもずっとあの姿だったな……。
苦い記憶が胸を過る。
「ふぅん。それやったら、毛利邸とつながりを持って夜中に何か情報でも探しているっちゅーことか？」
「いや、一応警戒してあれこれ仕掛けていたが、そんな気配は微塵もない」
念のため、Aさんが泊まる時は事務所のあちこちにこっそり細工をしているが、そこに異変があったことは一度もない。おっちゃんが、事務所ではなく3階の自邸に情報を持ち込んでいることもなかった。
「有能な情報屋が無目的に蘭ちゃんたちと交流を深めるなんてありえへんやん。普段OLとして仕事をしているなら、無駄な時間は過ごせへんやろ。
ちゅうか、情報収集が目的なら、はなから毛利探偵に近づいた方が早うないか？ わざわざ、蘭ちゃんを介するメリットなんてないやんか」
そうなんだよな……。
「ま、工藤がそれほどぽんこつになるっちゅーことはオレの助けが必要っちゅーことやな。
明日朝一で行くからもう寝るわ。お姉さんい会うならびしっと決めていきたいし。ほなな」
「は？ ちょ……っ！」
来なくていい、というオレの言葉を聞く前に服部は電話を切ってしまった。
はぁ、と、オレは黒いスマホの画面を見てため息をついた。
――どうにも、蘇芳Aさんが絡むと調子が狂ぜ。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月8日 10時
