自信過剰な彼氏6 ページ36
髪にキスを落とした昴さんはそれだけでは飽き足らず、額に、眉に、頬に、唇にとろけそうになるほど甘いキスを落としていく。
「Aさんにそんな言葉をいただけるなんて、光栄です」
――愛のささやきなんかで私が昴さんに勝てるわけがなかった。
髪をかき上げてきて耳朶に唇を押し当て――
強く抱き着いたのは腰が抜けそうになったからで、別にこれ以上屋外で愛を育みたいからではない。
だから「こんなところでこれ以上私をあおってどうさせたいんですか?」なんて、ことさら色気を帯びた声で囁いてくるのは本当にずるい。
――野外であんなこととかこんなこととかしないよね?
しない人なのかする人なのか、記憶の薄い私には判断がつかない。
でも、このまま抵抗しないと流されるだけだし――
私はどうにかして熱を帯びてとろけそうな理性をかき集めて言葉を紡いだ。
「せっかく外出しているんだし、歩きましょう!」
私は何とかもがいて彼の腕の中から抜け出すことに成功した。
「姫が望むなら私はどちらでも構いませんよ」
と、おそらく私の慌てぶりを察知したうえで、後ろでくすくす笑っている意地悪な声は、聞き流すことにした。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月13日 17時