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少し離れた所で
こちらに向かって誰かが歩いてくる気配がする

彼も既にそれを察知し、
薄らと血の付いたナイフは床に放り投げて
大きく、硬く、傷だらけの手を私の頬に当てた






「なあA、俺と来るか?」


『…どこへ?』







「お前が望む所にだよ。呪術師が腐った人間の集まりなのは分かっただろ?ここから抜け出して、俺と生きてみるか?」





ツッコむ所はいくつかあるが、
確かにこの件で呪術師を見る目が変わったのは確かだ

欲望のまま、己のために、どんな手段も厭わない
甚爾さんがここに来たのも、
殺し損ねた私を仕留めようとするどこかの呪術師の依頼なのだろう



もう以前のようには戻れない

しかし、だからといって呪い以外で生きていく方法もない





それに、

ほんの少しだが人が良い呪術師も居ることを私は知っている









『…いい。私はこっちで生きる。』



「…ふぅん。……惚れた男でもいるのか?」









返事を聞くと少し名残惜しそうに手を離し
またいつもの意地悪な笑いを見せながら窓を開ける甚爾さん

冷たい風が吹き込み
熱を帯びていた首筋の傷と耳の後ろの痕を心地良く撫でていく









『惚れてない。でも、あんまり離れたくない。』


「青いなァ。聞かなきゃ良かった。」








べえ、と舌を出し苦い顔をすると
窓枠に足をかけて最後にもう一度だけこちらを振り返る


お互い目を合わせるだけで何も言わず、ただ少しでも長く見つめ合う


彼と会うのは、これが本当に最後な気がする

” 好き ”という名前の感情ではない。
一般人でもなく、呪術師でもない、
呪力を持たない彼の目に映る自分はただの女だった

それが心地よく、” 特別 ”だった









『…ありがとう。』



医務室のドアが開くと同時に消えていった彼に
風の音に消されてしまうくらいの小さな声でお礼を言った

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(プロフ) - 凄い面白いです!休校中の楽しみですねもう。更新応援してます! (2020年4月13日 10時) (レス) id: b1b211da94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月11日 13時

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