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まだ生きているのか、
すでに死んでしまったかもよく分からないまま
ぼんやりと目を開けると白い天井と視界の端に黒い影が映った

穴が開いたお腹と脇腹に微かな痛みと熱を感じ
これはもしや、と希望が芽生える






「あ"?意識あるじゃねえか。」

『…、』



しだいにはっきりしていく意識の中で
隣で見下ろしている人物の風貌と口の悪さが分かる

無事ではないが生き延びることができたこの喜ばしい瞬間に
何故あの人相の悪い顔を拝まなければならないのだろう






『…違う。』

「なにが?」





『見たかったのはその顔じゃない。』

「失礼な奴だな。目が覚めて一番に俺の顔を見れるなんて贅沢じゃねえか。」





『あんたはだいたい昼まで寝てるでしょ。なにが贅沢なの。』

「それが贅沢なんだよ。前妻とお前だけだよ。俺の寝顔を見れた女は。」






『もう覚えてもないけどね。………で、大声上げた方がいい?』






何回かのやり取りで意識は完全に戻り
ぼんやりとしていた視界も回復し、いまの状況も理解できた



ここは高専の医務室だろう
どれくらい意識がなかったかは分からないが
傷口はすでに塞がり、あれほど深い怪我をした割に痛みも少ない

治療痕からは硝子の呪力を感じ、
彼女が反転術式で治療をしてくれたのが分かる







「やめとけ。どうせ間に合わねえ。」



そして私が横たわるベッドに腰掛けたこの男は
私の首元にナイフを突きつけている

生きていたことに安堵したのもつかの間、
再び命の危険に晒されているこの状況に溜め息すら出ない









『仕事?』


「ああ。ここで死にかけてるお前にトドメを刺すと1000万。楽な仕事だろ?」





こんな所に忍び込むなんて呪力を完全に持たない
彼にしかできない芸当だろう

つい先日お昼ご飯を奢らせた相手を
金のために殺しに来るなんて、やっぱりクズすぎる








『殺すの?私を。』


「……眠ったままなら殺れたんだがな、どうも気が乗らん。」








『もし殺すなら、甚爾さんがキスしながら殺してよ。』


「ハッ…、いいな、それ。」









首に当てられたナイフはそのままに
喉を鳴らして笑いながら近づく顔を、目を閉じて待つ

貪るように荒々しいキスは病み上がりには辛く、息が漏れる
でもそんなのはお構いなしに
自分本位で好き勝手に口内を侵した彼は最後に耳の後ろに痕を残した



いつ切り裂かれるか分からなかった首元は
赤い線が1本、微かに血が滲んだだけでまだ繋がっている

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(プロフ) - 凄い面白いです!休校中の楽しみですねもう。更新応援してます! (2020年4月13日 10時) (レス) id: b1b211da94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月11日 13時

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