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14 - 2 宵闇の ページ10

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「…ありゃ

見たこともない顔してるよ
あんなに凛としてる子だったんだ、名前の通り」





くすと、肘をついて笑った。

その隣で、兄は嬉しそうに笑う。





「そうじゃろう、やればできる子なんじゃよ、凛月は


…”以前”の自分の気持ちにも、気付くのは時間の問題じゃろうな」






その言葉を聞いて、薫は心底残念そうな顔をし、口を僅かに尖らせた。


講堂に入るときに支給されるサイリウムを、灯りもつけずに弄びながら。





「…もしかしなくても、Aちゃん?


俺、結構お気に入りなんだけどな…」





『知っとるよ』と零は笑い、ステージの上の弟を見ながら言った。





「Aの嬢ちゃんは今、変わろうとしておるんじゃよ


決められた運命から、抗えるように
その為には、こうして辛いことにも目を向けなくてはならんのう」





薫も、同じくステージを見上げ、少し黙ってから、俯いた。




「…

Aちゃんってさ
俺と同じように見えて、何か見捨てられないんだよね


ひとりぼっちで、寂しそうに見える
ユニットの皆といつも一緒に居たりしてるのに

何処かまだ、居場所を探してるみたいに」






珍しく、ぼそぼそと話す薫に、

零は目を細め、微笑んだまま続きを促している。





「…、ほんとは男にこんなこと話したくないよ?


自分が寂しいアピールしてるみたいで、格好良くないし」





照れ隠しのように笑った薫に

敢えて零は笑みを消して真顔になった。





「良いんじゃよ、それでこそ人間じゃ


それに、UNDEADがある限り、薫くんには少なからず1つは、居場所がある

性格に若干難ありじゃが、薫くんも良い子じゃよ
Aの嬢ちゃんに、よく似ておる」





「…男に慰められても、嬉しくないんだけどな」





そう言いつつ、薫は笑った。


零は、今度は講堂の最前線の席の辺りを見て、壁に寄りかかり、腕を組んだ。





「全く、手がかかるのう、うちの子達は」





薫も、その言葉にくすと笑う。





「似てるから、なのかな

俺があの子が気になるのも、力になりたいって思うのも」




「嬢ちゃんの魅力かもしれぬな

助けてあげたい女の子、みたいにのう」




「やっぱり、Aちゃんが可愛いからだ」





けらけらと笑った2人の背後から、1つの声がかかる。





「羽風先輩、朔間先輩

そろそろ」






薫は背伸びをして、扉に手をかけた。






「…俺は、愛する子の為にだからね」




「好きにしておくれ」






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まひる(プロフ) - *ピンク*さん» ありがとうございます、嬉しいです(*´ω`)これからの物語も楽しんでいただけるようなものであれば幸いです〜(人*´∀`) (2019年10月17日 21時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
*ピンク*(プロフ) - いつも楽しく読んでます!!更新頑張ってください!!!!! (2019年10月17日 20時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まひる | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年10月13日 15時

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