17 - 2 異世界の友 ページ31
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音のない、音楽室。
ピアノの下で、寝そべって。
真昼間の癖に、目は冴えている。
凛月は何とも言えない表情でピアノを下から見上げている。
「(”あれ”から王さまに変化はない
Aも同じ
そのまま秋も終わる時期になっちゃった)」
カーテンは硬く閉ざされている。
暗い、闇の中に、光と共にもうひとり。
「凛月〜
居るんだろ、出てこ〜い」
凛月はちらっとそっちに目線をずらし、
すぐ、戻す。
圧し黙ったままだった。
「(やっぱり”崖から”じゃ意味ない?
本当に、”屋上から”しか
…でもそうなら、Aが)」
「こら凛月
無視すんな、呼んでるだろ〜?」
ひょっこり顔を覗かせた『真緒』に、凛月は笑ってその首に手を回す。
寝床に相手を引きずり込むように。
「まーくん…♪
また自分から世話焼きに来たの〜?
ふふん、その心遣い、誉めて遣わす…♬」
「何様だよ…
まあ、否定はできないけどな…」
苦笑いの真緒に、凛月は貼り付けた表情の内で悶々と世界を広げる。
頭の中の世界が、必ずしも楽しいものだとは限らない。
おれたちならよく、分かってる。
「(A自身の、俺達にとっての存在価値は認めさせた、知らしめた
そこは多分、もう大丈夫
…それが”繰り返す”理由だったのなら、この”時間軸”はもう最後になる
けど)」
「凛月〜…?
誰でも寝床に引きずり込むのは止めろよ…?
あんずとか、A先輩とか、困っちまうだろ〜」
「(もし、それが理由じゃなかったのなら
Aはまた”繰り返し”ちゃう
そもそも、存在価値の証明なら簡単
この”ループ”もすぐに終わらせられたはず
……だとするなら。
その”本当の理由”っていうのは?)」
「おい、凛月〜?
お〜い?…俺、瀬名先輩に頼まれて呼びに来ただけなんだけど…」
「(…少なくとも、これまでの”ストーリー”で思い当たる節はない
……なら、俺がすべきことは)」
「よっ、と」
「………んん…?まーくん…?」
ピアノ下から引きずり出されて首を傾げる凛月に、
真緒はそのまま凛月を背負って歩く。
足は引きずられてるけど。
「まだ寝てていいぞ?
眠いんだろ、昼間なのに無理すんな〜」
そう言って笑った真緒に
凛月はふと笑った。
一緒の世界に居て、違う世界の友の温もりに
「…ありがと〜、まーくん」
共有しようもない孤独を、密かに感じて。
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まひる(プロフ) - *ピンク*さん» ありがとうございます、嬉しいです(*´ω`)これからの物語も楽しんでいただけるようなものであれば幸いです〜(人*´∀`) (2019年10月17日 21時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
*ピンク*(プロフ) - いつも楽しく読んでます!!更新頑張ってください!!!!! (2019年10月17日 20時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)
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