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14 - 4 ふたつの姫 ページ12

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「桃李くん」





ぶわっと舞ったマントにさえ、歓声が沸く。


その歓声に、桃李は少しやりにくそうな顔をしながらも、笑みを浮かべた。





「…司


何でここまで、あのロン毛や会長がAの為にするのかは分かんないけど
Aならfineに相応しいと思うし僕もAの事、お気に入りだから

英智さまの望みなら、僕は全力で勝ちに行くよ」





まっすぐなその眼から反らしもせず、司は対して不敵に笑った。





「queenへの尊敬、忠誠、愛」





それだけ言って、剣を鞘にしまった司に

桃李は『は?』と言いたげな顔で固まる。



舞台袖の、

一言も交わさず俯いたままのAを、司は見て。

ただ黙ってステージの司の背を見ているKnightsの面々を桃李は見て。






「それらがどうして、桃李くんよりも私が劣っていると思うのです」





剣という名のマイクを手に、司は小さく呟いた。






「…誰にも負けはしません


私はqueenを誰よりも尊敬し
私はqueenに誰よりも忠誠を誓い
私は、誰よりもqueenを愛しています」





観客にも聞こえない、小さな声で。


その時、桃李に向けられた瞳は、敵を射抜くような鋭い眼だった。




びりびりと、桃李の背に電気が走ったような感覚。

その威圧に圧倒されてしまったような。




その感情に、唇を僅かに噛んで、桃李は笑う。

目の前で歌っている司の背に、投げ捨てるように言った。






「…生意気

司のくせにっ」






スタジオに響くのは、一本に通った司のまっすぐな歌声。




気高く孤独な王のように

誰よりも強い忠誠心のように



一筋にぶれることのない、愛情のように。






『今日は私の想いが全て

皆様、お姫様方にどうか、届きますように』






その頬を伝う汗が、ライトで光る。


1色のサイリウムが、ぶわっと広がる。





不意に、桃李がステージ裏を見た。


さっきまで俯いていたAの瞳が、そのサイリウムの海に釘付けになっていた。



その瞳にも、サイリウムの色がしっかりと見えた。




思わずぽかん、と桃李が見ていると、Aの目と合って、

更に桃李はきょとんとする。




Aはステージの前の観客を指差し、困ったように笑った。





Aの抱いてる感情は桃李にはわからない。

全部はわかりきれないだろう。





けれど。







『今度は僕も聴いてっ


可愛い僕の虜になって帰ってねっ』







自分の想いだけは伝えようと


それだけは、強く思った。







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まひる(プロフ) - *ピンク*さん» ありがとうございます、嬉しいです(*´ω`)これからの物語も楽しんでいただけるようなものであれば幸いです〜(人*´∀`) (2019年10月17日 21時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
*ピンク*(プロフ) - いつも楽しく読んでます!!更新頑張ってください!!!!! (2019年10月17日 20時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まひる | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年10月13日 15時

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