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11 - 6 牽制 ページ35

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「ねえ、どういうこと」





時は少し戻って夕方。


扉を開け放って早々、泉は椅子に座る英智を睨む。





「早いな


弓弦が桃李を連れて今帰ってきたばかりだというのに」




「動揺しておられないように伺えましたが

あれは見せかけ、というわけでございますか
…流石はKnightsの方々」



「ワカメ!

A先輩はボク達のところでこそ輝くんだからなっ
あの人は上がろうと思えばステージにだって上がれちゃう逸材なんだからっ」




「こら、姫宮…」





わあわあと騒ぐ桃李とそれを制す真緒を、泉は素早く睨む。



機嫌は絶不調。最悪中の最悪。

きっとあの『ゆうくん』でさえ戻せない。





「不機嫌だね


それはAを僕達に盗られそうだから?
Aは”皆のプロデューサー”だし、あんずちゃんだっているじゃないか


Aに固執する理由は、ないんじゃないかな?」




「それは無いわよォ、会長さん」






扉に手をかけて、彼も不機嫌極まりない笑顔を張り付けた。






「珍しいね、君まで来るなんて


Knightsのスーパーモデル2人がそこまで引き留める理由は何かな?」




「アタシは、あの子が愛する場所を守りたい

ただ、それだけ」




「そんな君は、Aに何をしてあげられたのかな?」





的確に、矢は放たれる。

射抜かれたように、嵐の動きは止まった。
 


敢えてか、泉は一言も発さない。






「君達は、Aに何もしてあげられない


本当に彼女が望む場所を、君達は作ってあげられているのかな?」




「それは、」






苛々が、嵐の顔にも出始める。

不機嫌そうにも笑っていた顔が、徐々に無になってくる。



でもその怒りの全てが英智に向くものではない。

寧ろ、半分以上が自分に対する怒り。






「彼女だって、君達に直接”君達がいい”って1度でも言ったのかい?


…心を持つ彼女を大切に扱ってあげられないのは、それは”いらない”と言っているのと同じだよ」





嵐は逃げるように顔を背け、唇を噛んだ。




泉の瞳は、小さく揺れた。

ずっと、英智を捉えたまま。






「いらないのなら、僕が貰う


…僕ならあの子を、最大限に”生かして”あげられる」






大きな剣が足元に突き刺さった。

気付いたら、身動きが取れなくなっていた。






「…それでも


Aセンパイだけは渡せないわよ」







すれ違い様、絞り出すようにただそれだけ。



それは静かな部屋に沈むように残った。





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Story 12『 Sea of recollection 』→←11 - 5 喜劇と悲劇



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まひる(プロフ) - 雪羅さん» ありがとうございます…!!妄想のままに描いているので賛否両論あると思いますが…(^-^; そういっていただけると嬉しいですー!(*´ω`)ありがとうございます(*’ー’*)ノ (2019年10月13日 11時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅(プロフ) - 前からこの作品見続けています!繊細で綺麗な表現とか、儚い世界観とか、謎の多いキャラクターとか、すごく作り込まれていてまるでドラマを見ているようでした!これからも頑張ってください! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 227c03626a (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - ありまさん» ありがとうございます…!そういったコメント頂けると、嬉しいです(*^-^*) (2019年10月9日 22時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
ありま(プロフ) - この作品の雰囲気がとても好きです。 (2019年10月9日 21時) (レス) id: ef20a5c3d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まひる | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年9月2日 9時

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