8 - 5 からくりドミノ ページ13
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衣装を雑に脱ぎ捨てて、回りの目を掻い潜り、まだ残る人混みをわけ、ぱたぱたと走る。
ライブの熱気の余韻は、まだ辺りに残っていた。
客に捕まると少し面倒だからと服の上から雑に羽織った黒いパーカーが、海風になびく。
ぱらぱらと散っていく人の中に、あの浴衣姿はない。
ハッとして、立ち止まる。
砂浜で、少し離れた崖を見上げた。
──ちゃんと人避けの場所もあるから
「……まさか」
またぱたぱたと走り出す。
階段の段数は自棄に多い。
くねくね曲がる、自然もの。
頂上付近で、自然と足は止まった。
『…会いたかったんだ
ずっと』
聞き覚えのある、懐かしい声が響く。
黒色パーカー姿の少年が目に入った。
浴衣の後ろ姿も見える。
『…でももう、叶わない』
どきんと、心臓が跳ねた。
『おまえが必要としてるおれは、
もういないんだよ』
一番言ってほしくなかった言葉を、言われたような気がした。
それが深く突き刺さって、抜けなかった。
浴衣の後ろ姿は、動かなかった。
顔をあげた少年がこっちを見て、俯く。
何も言わずに歩いてきて、そして
”何も言わずに通り過ぎた”。
細々と、微笑むだけで。
「…っ」
声は出なかった。
何て言えばいいのか、わからなかった。
ただ立ち尽くす後ろ姿にさえ、何て言えば良いのかわからない。
残った沈黙は、自棄に冷たい。
海の潮風が、肌を刺す。
夏なのに、妙に寒かった。
「…A」
少ししてから漸く名前を呼べた。
振り返ったAは、何事も無かったかのように笑って見せた。
「…お疲れ、凛月
ライブ、格好良かったよ」
その笑顔でさえ、深く突き刺さった。
痛くて、たまらなかった。
「…A、」
「戻ろう、皆待ってる
ちょっと海見てただけだから」
ずかずかと歩み寄って、Aの手を掴んだ。
俺が、Aとあいつを引き合わせた。
”何かを変えるために”。
結果、何も変わらなかった。
無駄な傷を与えただけで。
「凛月、？」
「…あんたがしたいことって、何なの
”この時間”の意味って、一体何なの？」
目の前の表情が、凍り付いた。
気が付いた時にはもう、言ってしまっていた。
「あんたが傷付いてまでそうする理由は何っ…？」
もうダメだと、悲鳴を上げて崩れ落ちた。
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まひる(プロフ) - 雪羅さん» ありがとうございます…！！妄想のままに描いているので賛否両論あると思いますが…(^-^; そういっていただけると嬉しいですー！(*´ω｀)ありがとうございます(*’ｰ’*)ﾉ (2019年10月13日 11時) (
レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅(プロフ) - 前からこの作品見続けています！繊細で綺麗な表現とか、儚い世界観とか、謎の多いキャラクターとか、すごく作り込まれていてまるでドラマを見ているようでした！これからも頑張ってください！ (2019年10月13日 9時) (レス) id: 227c03626a (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - ありまさん» ありがとうございます…！そういったコメント頂けると、嬉しいです(*^-^*) (2019年10月9日 22時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
ありま(プロフ) - この作品の雰囲気がとても好きです。 (2019年10月9日 21時) (レス) id: ef20a5c3d2 (このIDを非表示/違反報告)
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