らずべりー。32 ページ32
____ Itaru ____
「 いたる 」
歩きながら、三角は横で空を見上げながら俺の名前を呼んだ。
「 なに、三角 」
呼ばれて顔を向けた俺に、三角はただにっこり笑うだけで
ただひたすらに向けられる笑みに、俺は苦笑いするしかなかった。
「 なに、呼んだだけ？ 」
「 ちがーう 」
笑ったまま、そう首を振る三角が考えてる事が、俺には全く理解できない。
「 じゃあ、なに 」
春組で言えば、先輩やシトロンみたいなものだろう。
先輩の万能さとか、シトロンの訳わからなさとか。
まあ、先輩や三角に比べれば、シトロンは可愛いものだろうか。
壁を走ったりする三角や、軽く犯罪を成し遂げる先輩とかはもう不思議の域を越えている。
最早チート。
「 …いたるも、まだ子供だったんだな〜って 」
「 ……、はあ？ 」
俺が、子供。
20を超えた成人が、まだ子供。
「 …いや
そうかもな 」
臆病で、逃げてばかりで
子供のようにびーびー泣いたりはしないが、脆い。
ポーカーフェイスは崩れまくる。
こうして、この歳になって家出擬きをしている。
「 ……子供じゃんか、俺 」
「 ひそかも言ってたよ〜
あずまも、たすくもつむぎも、みーんな子供っぽいところあるって
ちかげも、そうじゃない？ 」
不意に頭をよぎった先輩の顔。
「 … 」
見えてきたMANKAIカンパニーの寮の街灯は、点いていた。
「 ……監督さん、まだ起きてるのかな 」
「 かんとくさん、カレー作って待ってそう〜 」
「 カレーは否定できないな… 」
半笑いで門を潜ると、玄関の奥に映った人影に、俺は目を細めた。
「 … 」
同時に、リビングに明かりが点いているのも見えた。
玄関を開けた三角が、後ろにいる俺に笑いかけ、廊下をたたーっと走って暗闇に消えていく。
少し先のリビングからは、明かりが漏れていた。
「 ……起きてたのか 」
「 何処行ってたんだ、こんな時間まで 」
玄関に棒立ちの俺に、誰かが声をかけた。
声の主の顔を見て、俺は目をそらし、黙った。
「 …風邪引くぞ
…少し付き合えよ、まだ寝ないんだろ、茅ヶ崎」
暗がりのなか、俺に向けられた笑みは、何かを企んでるみたいな、そんな雰囲気を持っていた。
「 …先輩 」
Title 32帰路の末のラスボス登場。
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