# Take 70 ページ23
「Aちゃん!
それと王さま!」
「おー、ナル!」
「おはよ、嵐」
笑って見せれば、嵐は少し焦ったような表情を和らげた。
「体調崩したって聞いたから…、心配したのよォ?
凛月ちゃんも司ちゃんも、もちろん泉ちゃんもね」
何故、先輩だけ分けて言ったのかは、私には分からない。
「う、うん、ごめん…」
「いいの、謝らなくて
ちゃんと休むのよ?健康第一、お肌にも悪いし、何より、Aちゃんがいないと調子狂うわ、みんな。」
意味ありげにそう言って、嵐は視線を横へとそらした。
その目線の先には、ぱらぱらと車が走る普通の登校風景。
いつもと何ら変わらない、道路と建物。
「あ、そうそう、今日泉ちゃんの雑誌の撮影があってね…」
隣では、さっきの意味ありげな沈黙が無かったかのように、嵐は喋り出す。
お兄ちゃんも、離れず私と嵐の後ろを黙って歩いていた。
冬が終わって、春が来る。
冬の凍えるような寒さが、春の程好い暖かさに変わる。
校門の桜は、そろそろ咲きそうだった。
もうそろそろ、別れの時が来る。
なのに私は。
「王さま、…A__」
「あら、おはよ泉ちゃん」
「おーセナ、待ち構えてたのかー?」
門に寄りかかり、腕組みをしていた先輩が、私を見てすっと立ち、少し戸惑ったようにも見えた。
その姿に、少しドキッともした。
いつもの先輩と違った。
「……お、……おはよ、」
「おはよう、ございます、……先輩」
まともに目を合わせられない。
目を合わせたら、どうかしそうだった。
「…泉ちゃん?」
「A…?」
「あっ、あの先輩、お兄ちゃんの楽譜と交ざって忘れ物してまして……!
こっ、これお届け物です……!!
あっ…と、みっ、お見舞い、わざわざありがとう、……ございました
…でっ、ではこれで失礼します……!」
「A、これは……」
先輩に1枚の紙を押し付けるように渡し、逃げるようにして歩く。
「…へっ!?あっ、こらAちゃん……!!」
私の後をパタパタと追ってくる嵐の足音と声だけが、聞こえる。
それ以外、何も聞こえない。
「ごめんなさい……!」
頭のなかが、真っ白になった。
.
『嗚呼、愛しき恋が薄れゆく』
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まひる(プロフ) - L:eta-starさん» ありがとうございます…!最近更新が遅めなのですが…それでも楽しんでいただけているようで何よりです!これからも精進します…!σ(*´`*) (2018年3月17日 9時) (レス) id: 203be79402 (このIDを非表示/違反報告)
L:eta-star - はじめまして、とても素敵です!お兄ちゃんしてるレオかっこいいです。瀬名もかっこよくて,,,,応援してます! (2018年3月16日 23時) (レス) id: e6de48871a (このIDを非表示/違反報告)
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