82話 お守り袋 ページ34
昼下がりのある日、城島が虹の家に訪れた。
咲の葬儀以来で少し痩せたようだ。
「やっと落ち着いたので顔をだしました」
それでも元気そうで。
テラスに皆で座る。
城島は雅紀の顔を見て安心したと頷いた。
「咲がずっと心配していたからね」
あの子は自分と似ている。
きっと同じものを抱えている。
だから心配。
でも大丈夫。みんながいるから大丈夫。
「そう言っていました」
雅紀の顔を覗き込む。
「うん頑固者の顔が少し素直になったな」
雅紀の顔が赤くなった。
「今日はねこれを渡そうと思って」
小さな紙袋。
手渡されて中身を見て雅紀の顔が歪んだ。
「あーばさん、何？」
テーブルに中身を出す。
緑、黄、赤、紫、青小さな袋。手作りのお守り袋だった。
「雅紀君なくしちゃっただろ？それを知ってね、どうせならみんなの分もって咲が作ったんだ」
渡す前に空へ旅立ってしまったけれど。
「雅紀君？」
どうしていいかわからない表情の雅紀。
「こういう時に泣くんだよ？」
「……」
「仕方がないですね、ハイ、涙スイッチ押しますよ」
ポンポンと和也が雅紀の頭を優しく叩く。
ポロポロとこぼれる涙。
「咲さんありがとう」
それぞれにお守り袋を手にする。
雅紀は勿論緑色。
「それにしても便利なスイッチだね。もう一度押したら止まるのかな？」
城島が雅紀の頭に触れた。
止まるはずの涙はより一層流れ落ちる。
「あれ？号泣になっちゃった?」
「止めるスイッチはまだ発見してないんです」
ん〜と考えていた智が雅紀に抱きつく。
止まる涙。
潤が頭に触れて涙が再び流れ落ちる。
翔が抱き着いて涙が止まった。
「あっ見つけましたね。止めるスイッチ」
「ひどいぃ、みんな俺で遊んでない？」
咲の言っていたみんながいるから大丈夫。
その中には和也がいて、智、翔、潤がいて、咲も城島もいる。
守られて励まされて心が傷ついてもみんな寄り添って共に有る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むつき(プロフ) - みるくプリンさん» あたたかいコメントに私のほうが泣いちゃいます。兄さんたち6人も大好きな人たちです。これからも頑張ります！ (2022年6月8日 7時) (
レス) id: 7a3d8c34a7 (このIDを非表示/違反報告)
みるくプリン(プロフ) - 初めまして！勝利６人組が好きなんですが、たまたまこの作品に出会いました。感動して泣きました、是非ドラマ化して欲しい(^.^)素敵な作品をありがとう。これからも頑張ってくださいね。 (2022年6月7日 18時) (レス) @page41 id: e740d416ca (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ちぇろさん» ありがとうございます。温かい言葉にやさぐれていた心が穏やかになりました。こちらこそ感謝です！ (2021年9月16日 20時) (レス) id: 7a3d8c34a7 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ(プロフ) - 久しぶりに読み返させていただきました。ちょっぴり凹んでいた心がほこほことあったかくなりました。ありがとうございます。大好きなお話です。またおじゃまします。 (2021年9月14日 22時) (レス) id: 84d56b057b (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - めいさん» 二回もたどり着いて頂いて嬉しいです！ありがとう！ (2015年12月2日 18時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むつき
| 作成日時：2012年8月2日 21時
