sleepy 19 〜国見side〜 ページ20
「うわっ！」
という言葉と共に、脚立の上に乗っていたA先輩がバランスを崩した。
「危な！」
どうするか考えるよりも先に俺は体が動いており、とっさに先輩の背後に回った。
ドスン
という鈍い音がなり、俺と先輩は同時に尻もちをついた。
「いった、、、」
自分のお尻に少し痛みが走り、思わず声に出してしまう。
A先輩は俺の足の間で尻もちをついている。
どうやら頭は打たなかったらしい。
「ごめん国見君！大丈夫！？」
と状況を理解したのか、A先輩が慌てた様子で俺の様子をうかがう。
「俺は大丈夫です。それよりA先輩、、、」
「大丈夫ですか」と言いかけたとき、すぅっといい匂いが鼻を刺激した。
そうだ、この匂いだ。
「ごめん、今退くから、、、」
と立ち上がろうとするA先輩の腰に腕を回し、自分の方に引き寄せる。
距離が近くなった分、匂いも強くなる。
先輩がなにか話しかけてきているが、耳に届かない。
俺はそのまま先輩の背中に頭を預けた。
「く、、、国見君？大丈夫？」
「このカーディガン、俺のですよね？」
先輩が着ているカーディガンを見る限り、おそらく俺が貸したもので間違いないだろう。
「そうだよ、国見君から借りてるやつ」
「ですよね、、、」
でもなんでだ、俺のカーディガンのはずなのに、やたらといい匂いがする。
「ほ、本当に大丈夫？」
「大丈夫です、怪我はしてないんで」
正直、そんなことよりもこの匂いのほうが気になる。
「いい匂い」
「、、、もしかして匂い嗅いでる？」
「はい」
「なんで匂いなんか」
「やっぱりなんか変に落ち着くんですよ、A先輩の匂い」
と先輩の背中に顔をうずめる。
先輩は離して欲しそうにしていたが、正直もう少しだけ嗅いでいたい。
本当に落ち着く。
「国見君、怒るよ」
「別にいいですよ怒って」
怒られようがそんなことはどうでもいい
もう少しだけ、この匂いを嗅いでいたい。
先輩の身体に寄りかかり、目を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 394人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ますだ | 作成日時：2023年10月25日 2時
