ETERNAL after story

5 F ページ41

何となく毎日を生きていて。

何をやってもつまらなくて、面白くてもすぐに飽きてしまって。

同級生との恋愛は俺に何の高揚も、幸せも感じさせてはくれなくて。

そんな風に適当に生きていた高校時代に、俺はAの母親に出逢った。

生まれて初めてだった。
あんなにも激しく、深く、誰かを好きになったことは。

その恋が終わりを告げた後、俺も大人になってそれなりに恋愛はしてきたけれど、それでも報われなかった初恋は、ずっと俺の心の奥で宝物のように光り続け、癒えない傷のように疼き続けて。

俺が怖いのは、教師と生徒だからとか、親友の娘だからだとか、そんなことよりも。

俺はAにAの母親を重ねてしまい、いつかAのことを酷く傷つけるんじゃないかと怖くて。

誰よりも大切に思うAが、俺の汚ない思いで傷つくのが怖い。

そして何よりも狡いのは自分自身で。

身を焦がすような恋をして、失う辛さを２度と味わいたくない。

本当の俺は優しくなんかない。
意地悪で、嫉妬深くて、利己的で、心が狭くて。

そんな俺を知っても、Aが俺のことを好きだなんて思えない。信じられない。

ならばずっとこのまま、優しい兄のような存在で居続けた方が。

だけど。

優しい兄のような存在のまま、Aが他の男を受け入れるのを、本当に俺は見ていられるのか？
北山の手で女になるAのことを。

「かっこつけすぎなの、太輔は」

かつてあの人に言われた言葉をふと思い出す。

けれどそれは違う。
それ弱さの裏返しなだけだ。

俺は本当は怖いだけなんだ。
本当の醜い自分を知られたくなくて。

だから、本当に欲しいものは手に入らず、俺の手をすり抜けていく。

A。

自分でも分からないんだ。

高校生の頃のように、無防備に、想いのままに行動するには、俺は大人になりすぎていて。
モラルや常識に縛り付けられ生きている中で、思うままに生きていくことなんて出来なくて。

どうしたらいいのか分からない。

お前をこの手に閉じ込めようとしても、きっといつかすり抜けて行きそうで。
ならば初めから手にしない方が、互いに全てを失わずに済むだろ。

なんて。

全部ただの言い訳で、けれど真実。

必ず自分のする行動には理由がある。
どんな些細なことも。

そこには必ず意味がある。
それが自分という人間を形作る全てになる。

だから後悔したら駄目だ。

過去も、今も、未来も。

そう分かっているのに────。

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