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59話……です ページ14

Aは船の明かりの下で大阪城から届いた手紙を見ていた

『準備は整えて候。後、そなたの手で長曾我部元親を西軍へ率いれるよう手引きせよ』


グシャ

Aは手紙を握り潰し、手紙に火を付けた

炎が真っ暗な海に反射してゆらゆらと揺れる



Aはそっと海へと落とした




Aが船に乗る一日前

四国 長曾我部



元親「おい……嘘だろ?」

闇夜に赤く灯る無数の光

空には黒煙が伸び月夜に吸い込まれていく


元親「これはっ……どういう事だよ!!!」


燃える燃える

赤く燃える

村が…………

町が………

国が……

民が…

全てが燃えていた


元親「何で……こんなことにッ!!」

長い航海を終え、やっと帰ってきた

土産話を酒の席で聞かせる筈だった

元親(なのに、こんな事って……)

長曾我部の目の前に広がるのは燃え盛る炎

崩れ落ちる家屋

立ち込める黒煙

ただ“それだけ”だった

轟々と燃え盛る炎の音だけが四国の夜を支配していた

元親(そんな……悲鳴も、泣き声も聞こえねぇ!)

そう、これだけの大惨事にも関わらず人の気配すら感じない

火を放たれてからそう時間が経っていないことは家屋の燃え方で推測できる

逃げ惑う民に遭遇してもおかしくはない筈だった

絶望的思考が長曾我部の頭を過る

後ろには信じられぬと呆然としている部下がいる

部下達にも残してきた家族がいた

元親「…ッ野郎共!! 今凹垂れてる暇はねぇぞ! 生存者を探せぇ!!必ず誰かは生きてる!!!」

兵「あ、兄貴…」

元親「手分けして探すぞ!!生きてる奴がいるかも知れねぇ」

兵「は、はい!」

元親「山も探せ!逃げのびてる奴も知れねぇ!!」

兵「わかりやした!!い、行くぞ」

兵「お、おう!!」

本当は夢だと、悪夢だと嘆き、こんな現実を嘘だと、有り得ない事実だと目を背け、受け入れる事を拒みたいところだ

だが国主の長曾我部には、それすら許されない

皆の指揮を執り、少しでも民の安全を確保しなけばならない

それがこの地を治めている者としての責務

嘆き苦しむ暇は、長曾我部には無いのだ

一人、崩れる訳にはいかなかった


炎が長曾我部を嘲笑うかの様にユラユラと揺れる

元親「……ッ!!」

少しでも多くの生存者を探すために、敵の証拠が焼け消えてしまう前に、長曾我部は動き出した


元親「ぜってぇ見つけ出す!!」


長曾我部は赤い炎の海へと足を進めた


燃える


燃える


赤く燃える


炎が四国を飲み込んだ

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梗谷(プロフ) - またまたコメントありがとうございます!!和んで頂いてよかったです!幸村様可愛ですよね(*´∀`)戦の時とのギャップがまた好きなんです! (2016年6月28日 16時) (レス) id: c7e9fbbed0 (このIDを非表示/違反報告)
百久一目(プロフ) - 幸村氏が…迚頗るとびきり目玉が飛び出るほど、いや、この場合目に入れてもいたくないほど、可愛いです。 そこで破廉恥だって叫ぶ時点で幸村氏ですねー(和み和み) (2016年6月28日 12時) (レス) id: 421761368c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒城 | 作成日時:2016年6月23日 20時

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