09 : "普通" ページ10
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コイツにとって、俺はなんなのか。
そんな問いは、愚問でしかない。
コイツにとっての一番は、いつだってピアノで、他のことは全部二の次。俺だって、例外なくそうなのだから。
だから、高鳴る鼓動も、上昇した体温も。夏の暑さのせいにした。
▽
「ね、勝己くんは普段どんな曲聴くの？」
目をキラキラ輝かせて寧彩が俺に問うてくる。
俺は心底疎ましそうに彼女を手で追い払いながら答えを口にした。
「あんま聴かねえ。時々勉強の合間に洋楽聴く」
「へえ！ 洋楽！ 英語私苦手なんだよね…」
「だろうな」
「ひど」
教室の隅に丸まっていじけ出した寧彩を鼻で笑う。こんのピアノバカが。どーせピアノ以外大して得意なモンがねえのは分かってんだよ。
移ろう視線の中で留まったグランドピアノに無造作に置かれた楽譜が挟んであるファイルを見て、ふと一つの疑問が湧いてきた。
「そういや、コンクールの練習はしなくていいんか」
来る度来る度違う曲を演奏する寧彩を不思議に思い、問うてみる。ピアノのコンクールなんて出たこともないが、演奏する曲を事前に決めて、満を持して臨むモンじゃねえのか、普通。
何気なく聞いたその問に対する答えは、あまりに突飛なものだった。
「うーん？じゃあそろそろ決めようかな」
「は？」
こんなマヌケな声を上げるのは何度目だろうか。
馬鹿なことを抜かすのは今に始まったことではないが、流石に今の発言には呆れた。聞けばコンクールに出るのは初めてではないようだし、コイツは今まで何をやっていたんだろうと。俺が付き合わされてたのはなんだったんだ。時間返せ馬鹿野郎。
そして彼女はまた、突飛な発言を俺にぶつけた。
「だって"普通"じゃ、面白くないでしょ？」
寧彩が愛おしそうに、優しくピアノを撫でる。
彼女は笑って続けた。
「いつだって、ピアノには奏でて欲しい曲がある。私はそれを、弾いてあげるだけ」
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りこ(プロフ) - 、さん» 外し忘れておりました。大変申し訳ございません。 (2018年2月14日 8時) (
レス) id: 40f7ee34c3 (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグ外して下さい (2018年2月14日 1時) (レス) id: 6903784267 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りこ | 作成日時：2018年2月14日 1時
