08 : 自然に、曖昧に ページ9
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残すところあと三日に迫ったコンクール。
あと、たったの三日でこの奇妙な関係に否応無く終止符を打たれるのならば。
それなら、時なんて止まってしまえばいいと。
そんな叶うはずもない、くだらない理想を、寧彩が奏でるピアノの音に描き、見出した。
▽
「今日はこれを弾こうかな」
暫く真剣な瞳で楽譜と睨めっこしていた寧彩が頭を上げる。興味のない素振りを見せ、早くしろよと顎でピアノを指した。苦笑した寧彩が鍵盤に指を添える。
繊細で、どことなく儚い印象を受けたその曲は、ショパンの「練習曲第3番 別れの曲」。
授業でも飽きるほど鑑賞したそれを、今。俺は、目の前の女が奏でるその様と共に、脳裏に焼き付ける。
弾き終えた寧彩が、子供が自分の力作を見せ、親に褒美を乞うように俺に感想を聞く。その純粋な目は些か、俺には不釣り合いなように思えて咄嗟に目を逸らした。一瞬、不思議そうに眉根を寄せた寧彩はなにも気付かなかったフリをして俺に再度感想を求める。
渋々口を開き、いつものように「いいんじゃねえの」と彼女が望む言葉をくれてやる。
するとその顔は、彩りを取り戻し、鮮やかに色付くのだ。
そして彼女は、俺に微笑んでから窓から差し込む日差しに溶け込んでしまいそうなほど、儚く美しい声で俺に言う。
「じゃあ勝己くん、お話しよう」
と。
俺は、操られるように自然に、そして曖昧に頷いた。
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りこ(プロフ) - 、さん» 外し忘れておりました。大変申し訳ございません。 (2018年2月14日 8時) (
レス) id: 40f7ee34c3 (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグ外して下さい (2018年2月14日 1時) (レス) id: 6903784267 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りこ | 作成日時：2018年2月14日 1時
