05 : 気まぐれ ページ6
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初めて会ったあの日。
俺に見せた、あの憂いと悲哀を秘めた笑顔は、次の日から見なくなったんだ。
だから、俺はこう考えた。
コイツはただ、寂しかったんじゃないかと。誰でもいい、一緒にいてくれる人が欲しかっただけなんじゃないかと。
それなら、ずっと傍にいてやってもいいかもな、なんて。柄にもなく考えた。
▽
翌日、昨日と同じ時間に、俺は音楽室に足を運んでいた。
相変わらず無駄に長い渡り廊下。別棟にある音楽室に行くには、更に階段を下らなければならない。それでも不思議と足取りは軽かった。
ガラリ、とドアを開けると、途端にピアノの音が止んだ。
艶やかな黒髪が、俺の前で弧を描いて過ぎ去っていく。ああ、間違いない。寧彩 Aだ。
「来てくれたんだね、爆豪くん」
ぱあっと顔を輝かせた寧彩の純粋無垢な笑顔には、昨日感じた違和感はまるでなくて。勘違いだったのかと、訝しみながらも納得した。
同い年の俺が言うのもなんだが、その笑顔は年相応の、あどけない笑顔だった。
その花のような笑顔を振り撒く彼女に俺は問いかける。
「今日は何を弾くんだよ」
「えぇー？せっかちさんだなぁ、もう少しお話しよう？」
「じゃあな俺は帰る」
「え、ちょ、待ってよー！弾くから！弾くって！」
今地球上でこれ程『必死』という言葉が似合う奴が他にいるというのなら見てみたいものだ。
俺の腰に抱き着いて正に必死に帰ろうとする俺を引き止めるコイツは、異性に抱き着くことに抵抗がないのだろうか。少なくとも俺は異性に抱き着かれることに抵抗があるので容赦なく振り払うと泣き真似をされた。ぶん殴ってやろうかと思った。
けれど、そんな気が湧いてこない俺はやはり病気かなにかなのだろうか。
ピアノの前に座り、楽譜が挟んであるらしいファイルを優しい手つきでめくる目の前のコイツを見て、ふとそんな事を考えた。
そんな俺の思考など顧みず、こちらに花のような笑顔を向けて微笑む寧彩。
「決めた。今日はこの曲にする」
「ふーん。はよ弾けば」
「興味なさそうだね」
「曲名聞いても分かんねえし」
俺の一言に、海のように深く、大きな瞳を更に大きくして驚きを表情にする寧彩が俺に問う。
「じゃあ、どうして来てくれたの？」
素っ頓狂な声。
昨日の大人ぶった寧彩からは考えられない声音。
そんな彼女を一瞥し、俺は言い放つ。
「別に。ただの気まぐれだ」
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りこ(プロフ) - 、さん» 外し忘れておりました。大変申し訳ございません。 (2018年2月14日 8時) (
レス) id: 40f7ee34c3 (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグ外して下さい (2018年2月14日 1時) (レス) id: 6903784267 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りこ | 作成日時：2018年2月14日 1時
