04 : 彼女の名 ページ5
・
彼女に出会うことは、必然だったのだろうか。
運命だとか。そんな言葉を信じるつもりは毛頭ないが、俺とアイツが出会ったことは、偶然にはとても思えなくて、偶然にしては出来すぎているような気さえするのだ。
なんの根拠もない。
けれど、俺とアイツが出会うことは、必然だったのだと。何故だかそう思わずにはおれないのだ。
▽
「どうだった？」
曲を演奏し終えて、心做しか頬が紅潮している彼女が俺に問う。
どう、と言われても…。鑑賞なんて授業でしかした事がないし、的確な意見など述べられないのだが。そんな事彼女も分かっているだろうに。
彼女の質問で俺が戸惑っている事が分かったのか、彼女は慌てて付け加えた。
「別に評論家みたいな意見が欲しいんじゃないの。なんの知識もない人が聴いてどう思うかが大事なの」
「はあ」
イマイチ言っている意味が掴めないのと「なんの知識もない」などという明らかにこちらを見下したような言い草に腹が立ち、気のない返事を零す。
彼女はそんな俺にくすりと笑いを漏らし、返事を促した。
軽く舌を鳴らして、先程の演奏を思い起こしながら言葉を紡ぐ。
「……目立った失敗もなかったし、弾き方も堂々としてたと思う」
「うんうん。練習して良かったよ」
からりと乾いた笑いを漏らした彼女が独り言のように言葉を零す。
そんな彼女の笑顔は、また俺の心臓を握り潰した。
さっきから、本当になんなんだ、これは。
俺は至って健康体だし、病気にかかった覚えもない。それなのに、彼女といると、まるでじわじわと病が体を蝕んでいくような、そんな感覚になる。
そんな俺の思考さえ、彼女にはお見通しのようで、なんだか急にその場を離れたくなった。
ヘラヘラとした笑みを貼り付ける彼女を横目に踵を返すと、後から彼女の声が聞こえた。
「明日も、来てくれる？」
耳を、疑った。
たった一度、ピアノを聞かせただけの男と、明日も会う約束をしようとするこの女に。
全く意味がわからない。
もしかしたら、人よりもいい俺の容姿と個性に群がる女かもしれない。
それでも。
俺は、無意識に言葉を紡いでいた。
「名前、なんて言うんだ？」
「寧彩。寧彩 A」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りこ(プロフ) - 、さん» 外し忘れておりました。大変申し訳ございません。 (2018年2月14日 8時) (
レス) id: 40f7ee34c3 (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグ外して下さい (2018年2月14日 1時) (レス) id: 6903784267 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りこ | 作成日時：2018年2月14日 1時
