03 : なにも変わらない ページ4
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いつから俺は、こんなにも彼女を想ってしまっていたのだろうか。
答えは俺が一番よく知っているにも関わらず、そんな疑問が頭を離れたことは片時もない。
彼女といると、俺は俺でなくなってしまうのだ。
彼女の全ての言動が俺の心臓を握り潰しているのに、当の本人は何も気付かずにいるのだから尚更質が悪い。
それでも、そんな彼女の隣にいる心地良さを、俺は誰よりも知っていた。
▽
「……は？」
俺の無愛想な表情から漏れ出た素っ頓狂な声が可笑しかったのだろうか、彼女はくすりと笑いを漏らした。でもそれも仕方の無いことだったと思う。
演奏を聞く？俺が？なんのために？
そんな疑問で頭が埋め尽くされていく。彼女はそんな俺の思考を遮るかのように口を開いた。
「来月、コンクールがあるの。演奏を聴いて、審査してくれないかな？」
パンっと顔の前で両手を合わせ俺に頼むその姿。それすらも演技に見えた俺は間違っているのだろうか。
ピアノなんてせいぜい一分程だろう。
帰宅してしまっても良かったが、たった一分の演奏の審査を断るほど俺も鬼ではない。
それに、彼女と話がしてみたかった。
単純に興味があったのだ。
先程聴いた、瞬きさえも許されないような演奏に。
あの、彼女の美しく、艶かしい演奏ぶりに。
片目を開けて様子を伺ってくる彼女に先程から拭えきれない違和感を抱きつつ控えめに頷く。
途端彼女の顔に笑みが溢れ、また俺の心を締め付けた。
「ありがとう！それじゃ、ここに腰掛けて」
まるで自分の家に来た友人をもてなすかのような口調で彼女は俺に椅子を勧めてきた。断る理由もないし、立ったまま演奏を聞くのも気が引けたので大人しく差し出された椅子に腰を落とす。
そんな俺に満足げに微笑んだ彼女は、ピアノの前に座り、ピアノに手を置いた。
途端に彼女が纏う雰囲気が変わったのを肌で感じた。
言葉ではうまく表せない。ただ、彼女がさっきまで纏っていたソレとは全く違うモノだと、それだけはハッキリと分かる。
綺麗な細く、長い指が鍵盤を優しく押す。
途端ピアノは綺麗な音を奏で始めた。
軽快なメロディ。そしてそれを奏でる彼女の佇まいと綺麗な指の動き。
先程となにも変わらないその音色。
そして、先程となにも変わらない、
体の動きを、意識ごと奪われたような感覚。
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りこ(プロフ) - 、さん» 外し忘れておりました。大変申し訳ございません。 (2018年2月14日 8時) (
レス) id: 40f7ee34c3 (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグ外して下さい (2018年2月14日 1時) (レス) id: 6903784267 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りこ | 作成日時：2018年2月14日 1時
