玖時間目「七松先輩と!」 ページ23
小平太「よし、町まで走るぞ! いけいけ、どん」
『走りませんよ!?』
小平太「えー、それなら仕方がない」
私は必死で七松先輩を遮った。
今日はいよいよお医者さんに診てもらう日である。何と言われるか気が気でないけれど、気にしたって仕方がない。
残念そうな七松先輩を横目に、私はため息をついた。
普段なら強行突破しそうな七松先輩なのだが、今回は違う。周りから見たら、下級生の女の子をぶん投げた挙句に丸一日寝込ませているのだから。綾部先輩と藤内に何があったかを聞いた立花先輩が、いつものクールさをかなぐり捨てて雷を落としたらしい。
作法委員会、大好き。
商人たちの声、美味しそうな匂い、たくさんの人々。町はいつも通り活気に溢れていた。新しくできた簪の店に目が吸い寄せられていく。
小平太「さて、行くか! と言っても今日は平気そうだな」
私の視界を遮断するように、七松先輩が覗き込んでくる。まあ、あれだけ寝てたらね。
『私は別に帰ってもいいんですけど、でもその前にお店を覗くのもありかな〜って』
小平太「いや、ここまで来たなら行くぞ」
ちぇっ、簪はまた今度にしようっと。
『こんにちは〜』
先生「はいこんにちは。おや、初めての顔だね」
町の外れにある、少し静かな場所にそれはあった。ここらでは腕がいいと評判の町医者だ。机の上の書類から顔を上げてこちらを見る様子は、優しそうなおじさん先生、といった感じか。
小平太「最近ずっと寝ているから診てやって下さい。家族が心配していて」
今日の七松先輩と私は兄妹という設定だ。流石に学校の先輩と後輩が町の診療所に一緒に来るのは、どう考えても不自然だからね。
私は先生の前に座ると、不服そうに眉を寄せてみせた。
『もともと、よく寝るんです。最近は疲れることが多くてたくさん寝ちゃっただけで、そんなに大騒ぎする必要ないと思ったんですけど』
先生「まぁまぁ、心配してもらえるのは有り難いことだからね。一応診せてごらん」
そうして私は、言われるがままに腕を差し出した。先生が脈を測っていく。
そう言えば、夢でお告げがあってから今日でちょうど1週間だ。今のところまだ死んでないし、神様のご加護があったのだと信じたい。もし帰り道とかに倒れて死んだら……どうしようもないけどね。後輩の死に際に直面した七松先輩に、天国からドンマイと言うしかない。
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おんぷ - 続き見たいです (2月4日 20時) (レス) id: e0221025e3 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖水 - 黒糖さまでーすさん» 同じく (2023年4月1日 2時) (レス) id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖水 - 終わってるんですか、残念です (2023年4月1日 2時) (レス) @page21 id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - なんで終わってるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ((((泣 (2023年3月14日 22時) (レス) @page21 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さんでーす - 更新頑張って下さい。続きが気になります (2023年3月2日 18時) (レス) @page21 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まみむー | 作成日時:2022年8月7日 22時