: ページ21
新野先生「おや、目が覚めたんですね」
七松先輩と二人きりという地獄の空間に、救世主が現れた。七松先輩を見て驚いたような顔をするが、すぐに諦めたように首を振った。待って先生、七松先輩の自分勝手ぶりにお手上げしないで。普通3年生の女の子が寝ているところに6年生男子がいたら問題でしょ。
まぁ、この話は置いておこう。
『もうすっかり元気です』
新野先生「いえ、Aさん、貴方の健康状態を確認させてもらいましたが、どうも最近よくないようですね。いつも以上に睡眠時間が長いと、三年生の皆さんからも聞いています」
きゃー、こうなるからバレたくなかったんだ。
新野先生「脈も平均より随分遅いですし、顔色もよくありません。最近疲れやすかったりしませんか?」
『ええ、まぁ疲れやすいと言えば……』
新野先生「栄養は取れているようですし、もしかしたら重大な病気が隠れているかもしれません。ここには最低限の設備しかないので、一度町のお医者さんに診てもらったらどうでしょうか」
確かに、もともと死に至る病だから重大なんだけどさ……でも、診てもらったところでどうにもならないものなんだよな。
首を縦に振らない私に、新野先生は心配したような、困ったような顔をする。
小平太「大方、周りに心配かけたくないんだろう? 普段元気な奴はそんなものだ」
初めて先輩と意見が合った気がするよ。
『私なら大丈夫ですよ』
私はにこりと笑った。
小平太「そうだ! 私が医者に連れて行こう!」
『いいですって!』
何も聞いてなかったなこの人。
新野先生「確かに、七松くんが一緒に行ってくれると心強いのですが……」
『本当に大丈夫なんですっ! 頼むから……』
立ち上がろうとした私の腕を先輩が掴む。その鋭い眼光に、私は思わず息をのんだ。
小平太「いいから、私と共に来い。何としてでもだ」
先輩の力はとても強くて、私の力では振りほどけなかった。少し開いた戸の向こうから月明かりが差し込み、私たちをぼんやりと照らす。先生も先輩も、私を心配してくれるのは分かる。けれど……どうしようもなくイライラしてきた。
私は笑顔を消し、先輩を見上げた。
『では、約束してください……医者に何と言われようと、みんなには秘密にしてくださると』
私の表情に何か並々ならぬものを感じたのだろう。先輩は少しの沈黙のあと、神妙な顔で頷いた。
私は頬を緩める。
『大丈夫……私は大丈夫です』
半ば自分にも言い聞かせるように、私は囁いた。
162人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おんぷ - 続き見たいです (2月4日 20時) (レス) id: e0221025e3 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖水 - 黒糖さまでーすさん» 同じく (2023年4月1日 2時) (レス) id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖水 - 終わってるんですか、残念です (2023年4月1日 2時) (レス) @page21 id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - なんで終わってるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ((((泣 (2023年3月14日 22時) (レス) @page21 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さんでーす - 更新頑張って下さい。続きが気になります (2023年3月2日 18時) (レス) @page21 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まみむー | 作成日時:2022年8月7日 22時